小夜啼鳥が愛を詠う

相手は、去年の優勝校。
一筋縄でいくわけがない。

「でもこのチームって、決して未来くんのワンマンチームじゃないよな。」

頼之さんのつぶやきに、佐々木和也がうなずいた。

「そう思います。2年の4人がいいですね。……来年もイイ線いくんじゃないですか?」

……え……。
じゃあ、来年も……薫くんは部活メインの生活なのかな。

少し淋しくなった。

まあ……仕方ないけどね……。


準決勝で強豪校を破った勢いは止まらなかった。
2日後の雨の中の決勝戦ではフォワードの2年生がハットトリックを達成。

……本当に、インターハイ出場が決まっちゃった。

泥だらけの薫くんは、ピッチから私を見つけると大きくジャンプして両手を振った。

脈動する張った筋肉が妙に生々しくて……私は嫌でも思い出さずにはいられなかった。
薫くんと交わした無言の約束を。

「さっちゃん、顔、赤いよ?」
光くんにそう指摘されて慌てた。

「や!あの……ちょっと熱いかも。雨で風邪ひいたかも?」
そう誤魔化したつもりだった。


でも、実際に私は風邪を引いてしまった。
雨に濡れて走り回っていた薫くんたちは元気なのに、傘も合羽も着てた私が熱を出すなんて……。

光くんのパパとママが車で家のマンションまで送ってくれた。

「……ご迷惑かけて、すみません。」

しょんぼりしてそう言ったら、光くんママが明るく笑ってくれた。

「全然。むしろごめんね。無理させちゃって。……思い出すわ~。私もね、光がお腹にいる時に、独りで遠征したのよね。インターハイ会場に。直射日光は避けて観戦したんだけどそれでも熱中症みたいになっちゃってね。……さっちゃんは無理しないで。」
「え……。妊娠中に独りで遠征ですか?それは……。」

無理というより、無謀じゃないだろうか。
さすが、光くんママ……無茶するわ。

「なあ?そやろ?俺、スタンドにあおい見つけた時は、さすがに目ぇ疑ったわ。……や。うれしかったけどな。」

頼之さんはそう言ってから、ちょっとためらって、口を開いた。

「……インターハイは8月頭から、たとえ勝ち進んでも一週間ほどや。盆には全部、終わってると思う。須磨の日程は……さっちゃんの体と相談して決めたらいいから。」

え……。
それって……。

やばい。
顔から火が出そう。