小夜啼鳥が愛を詠う

「……親としては、どっちもどっち。いや、むしろ、真っ白でいてほしいって幻想を壊されたくないんだけど……でも、確かに、あまりキッチュなホテルとかは勘弁してほしいけど……。」
パパが小声でぶつぶつぼやく。

光くんが笑いを堪えて言った。
「2人ともデリカシーなさ過ぎ。さっちゃんが困ってるよ。」

パパも薫くんも、おもしろいぐらい慌てて取り繕った。

「じゃあ、こうしましょうか。マスター。薫たちがインターハイに出場できたら、僕も一緒に須磨に泊まりますよ。」
「え……。」

それって……2人きりじゃない……。

薫くんは、すごーく嫌そうな顔で猛反発。
「全然あかんわ!そんなん、いつもと一緒やん!」

「そう?ちゃんと夜までは2人きりにさせてあげるよ?僕は遅れて行くから。ね?マスター。それならいいですよね?」

……確かに、折衷案だ。

でも、パパも薫くんも渋い顔をしていた。



「だいたい、マスターも光も過保護過ぎるわ。桜子はもうとっくに20歳過ぎとーのに。わざわざ俺が筋を通して許しを得とるん、わからんかなあ?空気読めや。」

私を送ってくれながら、薫くんはぷりぷり怒っていた。



そして、帰宅したパパも。

「だいたい、薫くんは生意気過ぎるんだよ!俺は、薫くんのおじいちゃんの親友だぞ。中学も高校もサッカー部も大先輩だぞ。敬えとは言わないが、少なくとも敬語を使うべぎだろ。」

「……そうねえ。いずれ舅になるのにねえ。」
「う……。」

ママの相づちに、パパは何も言えなくなってしまった。

親和性があるはずのパパが、薫くんにだけはピリピリしてるなあ。

うちの場合は、嫁と姑よりも、婿と舅のほうが大変かもしれない……。




5月に入ってすぐ、インターハイ予選が始まった。

たかだが地方予選の1回戦……なのに観客席は大騒ぎ。

今年引退を表明してフランスから帰国した佐々木和也さんが現れたのだ。
かわいらしい雰囲気の奥さんと、みゆちゃんも一緒に。

「お姉さま~~~。」
ぶんぶんと手を振って、みゆちゃんが駆け付けて来た。

「みゆちゃん。久しぶり。元気?音楽学校、大変じゃない?」

「うん。大変。でも、みゆ、根性あるから。がんばってる。……それより……薫のこと好きな子、けっこういるみたい。桜子さん、大丈夫?」

私はすぐに返事できなかった。