小夜啼鳥が愛を詠う

ため息をつくと、光くんが苦笑した。

「まあ薫は、あの性格だからさ、そーゆー女の子には容赦なさすぎてね。……もうちょっと穏やかに対処できるといいんだけど……めんどくさいんだろうね。」
「……うん。薫くんに憧れる気持ちはわかるだけに……お気の毒。」
「みんながさっちゃんみたいにお行儀よく好きになってくれりゃ問題ないんだけどねえ。」

光くんはそう言って、そっと私の髪に触れた。

……また、桜が飛んできたのかな。

「ありがとう。いつも、ごめんね。」

くすっと笑って、光くんが言った。
「桜もさっちゃんが好きなんだと思うよ。」

……う……わぁ……。

そんな綺麗な顔でそんなこと言っちゃうんだもんなあ。
光くんてば……罪だわ。

「光くんに愛される人は、幸せで、不安でしょうね。」

「……そう?……僕、一途だよ。……まあでも、さっちゃんがそう言うなら、そうなんだろうね。」

そう言ってから、光くんは空を見上げて続けた。

「次は、気をつけるよ。」

……次。

次に好きになるヒト。
どんなヒトなんだろう。

どうか、光くんが、幸せな恋……何のタブーもない、誰にも遠慮しなくていい恋をできますように。




結局、薫くんには何も聞けなかった。

どんなにサッカー部の練習が大変でも、薫くんは毎日、パパのお店に寄って私に会いに来てくれた。

私は顔を見るだけで満足だったけど、薫くんは必ず私に触れた。

「充電。」
と、言って。

こんな私からどんなパワーを得られるのかよくわからないけれど、精悍を通り過ぎて戦士のように尖った薫くんの心とお顔が優しく弛緩するのを見ると、私も幸せになれた。

……ヘタなことを言って、薫くんを責めたり困らせたりしたくない。

毎日ボロボロになるまでがむしゃらに部活をがんばってる薫くんの癒やしでありたい。

「ゴールデンウイークも、当然お休みなしよね?後半、インターハイ予選始まるもんね?」

恐る恐るそう尋ねると、薫くんは困ったような顔で頷いた。

「……ごめん。ほんまは、休み1日あるんやけど……未来さんが自主トレしはるから、一緒にやりたい。」

……まあ、そうよね。

私は、なるべく悲しい顔をしないように、笑顔を作った。

「うん。がんばってね。観に行くから。」