小夜啼鳥が愛を詠う

キャプテンの佐々木未来くんは、早速薫くんを使いたいらしい。

並み居る先輩がたを納得させるためにも、薫くんは死ぬ気でやっている……らしい。

それを賭けの対象にしようものなら……めっちゃ怒らせてしまいそう。

「そう?でも、うちでは賭けてるよ。お金じゃないけどね。薫がインターハイに出場できることになったら、おじいちゃん、会長に退くんだって。」
「え……。」

まだ早すぎない?

「じゃあ、お父さんが社長に?」

成之さん、ようやく御役御免になれるんだ……。

思えば、頼之さんにちゃんと社長職を譲るために、成之さんは離婚させてもらえず、玲子さんと再婚できなかったんたもんね。

……その玲子さんも、藤巻さんと再婚して、京都で幸せそう。

長い道のりを経て、やっと成之さんも肩の荷を降ろせるのか。

「うん。そしたらね、マスターが羨ましがってね。……さすがにマスターは引退する気はないだろうけど、少し休暇をとってゆっくり旅をしたいと漏らしてたよ。」
「パパが!?……じゃあ、光くん、お店を任されるの?」

こちらも世代交代!?

光くんはニコニコ笑って首を傾げて見せた。

「どうかな?まあ、僕はそれで全然かまわないけど……たぶんマスターは死ぬまでマスターでいたいだろうし、一時的に休みたいだけだと思うよ。」

そう言って、光くんは私の髪にちょっと触れた。

「……桜の花びら。どこから飛んできたんだろう。もう八重桜も散るのに。」

濃いめのピンクの小さな花びらを私に見せてから、光くんは指をはなした。

風にひらりひらりと舞うのを眺める。

……あ……なんか……既視感。

「前にもこんなこと、あった気がする……。」

そうつぶやいたら、光くんは艶然とほほ笑んだ。

「そりゃあるよ。さっちゃんとは小さい頃から毎年、お花見もしてるし、中学からは一緒に登下校してたんだから。」
「……そうね。桜、どこにでもあるもんね。」

苦笑してそう答えたら、光くんがふと気づいたように言った。

「さっちゃんのママの桜はとっくに葉桜だけど、御室の桜はまだ間に合うかも。……行ってみる?」

私のママの桜、と光くんが言ったのは、例のあの桜だ。