小夜啼鳥が愛を詠う

「椿さんとみゆちゃんが組んで踊ったり、恋を演じてたら、僕ら、笑っちゃうだろうね。」

「はーい!それ、見たい!すっごく綺麗よ!絶対!」
突然、私の隣のママが手を挙げて振り向いて、薫くんに賛同した。

……ママ……恥ずかしい……。

てか、ママにも2人の会話、聞こえてたのね。

両家公認のおつきあいとは言え、一応、節度を守ってるつもりなので、こーゆーの、気恥ずかしいったらありゃしない。

私は意地でも寝たふりを貫いた。




大学生は暇だと聞いていたけれど……あれは、嘘だ。

いや、卒業単位をほとんど取ってしまった4回生は暇かもしれない。

でも、1、2回生はけっこうな数の科目を履修しなければいけないし、ましてや、私のように教職を取るとなると、はっきり言って高校時代とそう変わらない。

「いや、普通は適当にサボるんだよ。出席重視じゃない講義はノート借りて済ましたり。……さっちゃん、真面目すぎ。」

揶揄しながらも、光くんはあまりさぼらず、一緒に講義を受けてくれた。
私の教職課程の講義の時間は、図書館で過ごしてるようだ。

「すごく不思議な気分。あーちゃんがこの大学に通ってた頃のことを、僕はけっこう鮮明に覚えてるんだよね。……懐かしい、っていうんじゃなくて……うーん……年月を猛スピードで駆け抜けてきたような……」

よくわからないけれど、光くんは暇に任せて、愛するママの足跡を辿ったらしい。
そして、光くんママが光くんの実の親を探していた形跡を見つけると、何となく自分でも調べる気になったそうだ。

光くんの追跡調査は、大学の図書館を飛び出し、公的な資料館、ついにはかつての置屋さんへと足を踏み入れた。
時間をかけて、赤線と呼ばれた地区の顔役と交渉を重ね、ようやく資料を見せてもらえるようになると、光くんは古い帳簿を丹念にめくり、少しの手掛かりをも拾い集めようとしていた。

「私も手伝うよ?」
何度となくそう言ったけど、
「さっちゃんが行くとこじゃないよ。」
と、いつも断られた。

……看板こそ上げてないものの、水面下では今もなお風俗営業を続けている地域のようだ。

てか、そういうところに、光くんを独りで行かせることは、私もモヤモヤするんだけど。


実際のところ、光くんがどんな風に渡り合ったかは、知らない。