小夜啼鳥が愛を詠う

ずらりと並んだ生徒の前に、3人。
椿さんは、真ん中でリーゼントをして、とさかをたて、美しい声を張り上げて口上を述べた。

……かっこいい。
本当に、夢が叶ったんだなあ……。

涙がボロボロこぼれた。

てか、周囲、みんな涙ぐんでるし。
ママに至っては、嗚咽してるよ。

こうして、みんなに愛されて、育てられていくんだなあ。
なんだか元気と、あったかい心をもらった気がする。

お芝居が終わっても、何だか胸いっぱいでお弁当がのどを通らない。

「もーらいっ!」
横から、薫くんがお箸を伸ばしてきて、せっせと平らげてくれた。

30分の幕間のあと、ラテン系のショーが始まった。

熱い大人な雰囲気のショーの途中で、いきなりぶりぶりにかわいらしいベビーピンクの衣装で飛び出してくる初舞台生。
一糸乱れぬ最後のラインダンスは、本当に圧巻で……私は涙で何も見えなくなってしまった。

すごい~~~~!

終演後、すっかり放心状態でバスに乗った。

ママは超ご機嫌で、プログラムをなめるように読みふけっていた。

私は……集中し過ぎて疲れたのか……いつの間にか目を閉じて、うつらうつらしていた。


「桜子がココに入らんでよかった……。」
すぐ後ろに座ってる薫くんのつぶやきが耳に入ってきた。

「なに?水着みたいな格好で足を上げてるのが、気になった?お年頃?」
光くんが、小声でからかうようにそう聞いている。

「あほか。他の女がどんな格好でも、別にどうでもええわ。……でも、桜子はあかん。想像もしたくない。もちろん、誰にも見せたくない。」

……薫くんてば……もう……うれしすぎる~~~~~。

「だって、毎年、須磨で一緒に泳いでるのに。水着で。……お年頃?」

光くんは、どうしても薫くんを発情期に仕立てたいらしい。

「海で泳ぐんと、舞台で足上げるんは全然違うわ。……てか、みゆも何年後かにアレするんか。……あいつにできるんか?すぐ泣くくせに。」

チクリと胸が痛んだ。
……心配してないけど……信じてるけど……薫くんが他の女の子の心配をしてることに私は動揺した。

「泣くのは、薫の前でだけじゃない?みゆちゃん、根性あると思うよ。今日も誘ったのにお稽古優先したって。がんばってるじゃない。」

光くんはそう言って、それから笑いを含んだ声で続けた。