腎臓を損傷した上、妊娠が判明し、一時は母子ともに危なかったらしい。
……というより、子供は無事に取り出せたけれど、静稀さんはそのまま意識不明に陥り呼吸も止まったそうだ。
医療チームの尽力と、家族のサポートで、奇跡的に意識が回復したのが先月半ば。
現在は、麻痺した手と、失った記憶や言葉を取り戻そうと、リハビリ中らしい。
そんな状態なので、椿さんは静稀さんにお化粧を教わることができなかった。
でも、松本さんのご厚意で、静稀さんの親友でもある現在の月組トップスターさんに知己を得て、目をかけてもらえているらしい。
しかも、一昨日、椿さんは月組配属が決定したそうだ。
「椿氏を見てると、運も実力のうち、って、納得する。」
隣の野木さんがそう言った。
「僕は、塞翁が馬、って思ったよ。中卒時に受験できなかったから菊地さんと出逢えたわけだし……静稀さんの事故はいたましいけどね……。」
光くんがそう言うと、野木さんはしみじみとうなずいた。
「ほんとに。さくら女にちょっかいだしてた、あの、菊地ケダモノ先輩がねえ……。」
「ケダモノ言うな。」
背後から菊地先輩がお弁当とお茶を配りながら、そう口を出して来た。
「桜子にちょっかい……。」
初耳だったらしく、憮然とする薫くん。
「あの……すぐに、光くんが助けてくれたから……。」
具体的なことを話すとますます薫くんを不機嫌にさせてしまいそう。
なるべくごまかそうとそんな風に言った。
でも、食いついたのは、薫くんじゃなくて、ママだった……。
「あら!さっちゃん、菊地さんとご縁あったの!まあ、もったいない。……ママ、菊地さんのお酒、好きよ。ほら、『水戸菱菊』の原酒。」
「ありがとうございます。『水戸菱菊』は、うちの主力商品ではありませんし、販売価格も高いのに、ご愛顧くださってるかたが多いんですよ。……原価も高いから、実は、全く儲からないんですけどね。」
菊地先輩はそう言って、ママにお辞儀した。
「菊地酒類醸造の良心?」
光くんがそう尋ねると、菊地先輩は苦笑した。
「うちは常に良心的な酒を造ってるけど。」
……まあ、そうよね。
幕が開き、初舞台生の披露とご挨拶が始まった。
……というより、子供は無事に取り出せたけれど、静稀さんはそのまま意識不明に陥り呼吸も止まったそうだ。
医療チームの尽力と、家族のサポートで、奇跡的に意識が回復したのが先月半ば。
現在は、麻痺した手と、失った記憶や言葉を取り戻そうと、リハビリ中らしい。
そんな状態なので、椿さんは静稀さんにお化粧を教わることができなかった。
でも、松本さんのご厚意で、静稀さんの親友でもある現在の月組トップスターさんに知己を得て、目をかけてもらえているらしい。
しかも、一昨日、椿さんは月組配属が決定したそうだ。
「椿氏を見てると、運も実力のうち、って、納得する。」
隣の野木さんがそう言った。
「僕は、塞翁が馬、って思ったよ。中卒時に受験できなかったから菊地さんと出逢えたわけだし……静稀さんの事故はいたましいけどね……。」
光くんがそう言うと、野木さんはしみじみとうなずいた。
「ほんとに。さくら女にちょっかいだしてた、あの、菊地ケダモノ先輩がねえ……。」
「ケダモノ言うな。」
背後から菊地先輩がお弁当とお茶を配りながら、そう口を出して来た。
「桜子にちょっかい……。」
初耳だったらしく、憮然とする薫くん。
「あの……すぐに、光くんが助けてくれたから……。」
具体的なことを話すとますます薫くんを不機嫌にさせてしまいそう。
なるべくごまかそうとそんな風に言った。
でも、食いついたのは、薫くんじゃなくて、ママだった……。
「あら!さっちゃん、菊地さんとご縁あったの!まあ、もったいない。……ママ、菊地さんのお酒、好きよ。ほら、『水戸菱菊』の原酒。」
「ありがとうございます。『水戸菱菊』は、うちの主力商品ではありませんし、販売価格も高いのに、ご愛顧くださってるかたが多いんですよ。……原価も高いから、実は、全く儲からないんですけどね。」
菊地先輩はそう言って、ママにお辞儀した。
「菊地酒類醸造の良心?」
光くんがそう尋ねると、菊地先輩は苦笑した。
「うちは常に良心的な酒を造ってるけど。」
……まあ、そうよね。
幕が開き、初舞台生の披露とご挨拶が始まった。



