小夜啼鳥が愛を詠う

あ……なんか、嫌な予感……。

「じゃあ、練習、見にくれば?春休みは保護者が手伝いに来るし、私服の桜子が居ても悪目立ちせんから。」

……そう来たか……。

「昔、真澄さんも頼之くんの練習につきあってたなあ……。はい、薫くん。どうぞ。」
しみじみとそう言いながら、パパが薫くんにコーヒーを持ってきた。

「ありがとう。……てか、マスターとおじいちゃんの時は?サッカー部やったやろ。」

薫くんにそう聞かれて、パパは苦笑した。

「昔はそんなに厳しくなかったんですよ。強くもなかったし、熱心でもなかったしね。……中学は頼之くんの時代、高校はやっぱりあの佐々木和也の時代が一番強かったなあ……。」

ふーんと、相づちを打って、薫くんは静かにコーヒーカップに口をつけた。

……やんちゃなようでも、薫くんの食事のマナーや礼儀作法だけはおばあちゃん仕込み。
見とれるぐらい美しい所作に、私の頬が緩む。

「……さっちゃん、よだれ出てるよ。……いや、比喩だから。」

光くんにからかわれて慌てるぐらい、私は薫くんを見てるだけで蕩けそうに幸せだった。



こうして、春休みはほぼ毎日、薫くんの練習を見学させてもらった。

薫くんは本当に張り切っていた。

先輩たちの手前、いちいちアピールすることも声をかけることもなかったけれど、荷物やタオルをマネージャーや他の部員ではなく、必ず私に預けた。

何の説明もしなかったので、最初は薫くんの姉だと思われていたようだ。


でも、薫くんが私を呼び捨てにしているのを見聞きしたマネージャーの女の子から、2人の関係が噂されるようになった。

始業式が始まってから、薫くんは先輩に、私のことを聞かれたらしい。

「つきあっとるってゆーたら、最初は信じてもらえんかったわ。今はめっちゃうらやましがられとる。たぶんそのうち、からかわれるんやろな。」
しれっと薫くんはそう報告してくれた。

「そりゃうらやましいよ。さっちゃんは誰の目から見ても、綺麗で優しいお嬢さんだもん。大学の入学式でも注目されまくってたよ。サークル勧誘も、断るの大変。ね~?」

光くんがそう言うと、薫くんはジロリと光くんを見て釘を刺した。

「桜子に変な虫がつかんように、ちゃんとそばにいてガードしてやってや。……自分だけ、ふらふらどっか行ったらあかんで。」