小夜啼鳥が愛を詠う

「京都と言えば、ママが玲子んとこに遊びに行くってよ。春休みだし、薫くんも誘って、一緒に行ってくれば?」
「わ!薫くん、喜びそう。行く行く。」

そうはしゃいだけど、光くんが低い声で唸った。

「あ~~~~。無理かも。薫、始業式まで休みなしで部活って言ってたような……。」

え……。
そっかぁ……。

しょんぼりしてると、薫くんがジャージで現れた。

「また!春休みだからって、ジャージで登下校はダメだってば。制服、着ないと。」

光くんのお小言を馬耳東風と受け流し、薫くんは私にVサインをしてみせた。

「え?もしかして……スタメン入った?」

そう尋ねると、薫くんはうれしそうにうなずいた。

「わー!おめでとう!」
薫くんの両手を取って、祝福した。

……今日は幸せな日だわ……野木さんの追加合格と、薫くんのレギュラー入りを祝えるなんて。

「へえ。薫くん、頑張ったんだねえ。佐々木未来くんが引退してから、年功序列になったって聞いてたけど。」
パパもなんだかうれしそう。

「年功序列って……そんなエエモンちゃうわ。単に、実力主義の未来さんに抜擢してもろた俺ら後輩を排除して、自分らがスタメン独占しとっただけや。でも、それじゃ勝てんからな。」

薫くんはそう言って、自信たっぷりに胸を張った。

「俺は2年後、未来さんのチームの戦力になるからな。向上心のない一個上の先輩らのペースで練習しとったら、強くなるどころか身体がなまるわ。」

……なるほど、それで自主トレか何かするから、休みなしなんだ。

熱い薫くんはカッコイイし応援したいけど……ちょーっとだけ、未来くんに嫉妬しちゃうな。
薫くんに慕われて、いいなあ、って。

「薫。部活に熱心なのはいいけど、あんまりほっとくと、さっちゃん、淋しいと思うよ?」

……光くんは私の気持ちを読めるのだろうか……また、代弁してもらってしまった。

薫くんは、ちょっと目を見張って、それから私の顔を覗き込んだ。

「桜子。淋しい?」

その目がキラキラしていて……薫くん、うれしそう。

期待に応えるべく、私は鼻をすするマネをしてから、上目遣いで言った。

「うん。淋しい。春休みになったらもっと一緒にいられると思ってたから……。」

すると薫くんは、にんまり笑った。