小夜啼鳥が愛を詠う

「ああ。それで、薫たちが遊び場にしてても怒られないんだ。……でも薫が自慢することじゃないよ?そういうの、虎の威を借る狐ってゆーんだよ。」

やんわりと、光くんは薫くんにそう諭した。

薫くんは怯(ひる)んで、それから私を見て、情けない顔になって、しゅんとした。

心の動きが見て取れて笑ってしまいそう。
でも薫くんが打ちひしがれてるのがよくわかったので、話題を変えてみた。

「藤やんは、お坊さんの息子さんなのに幽霊を見たの?」

薫くんが、ぼそぼそと答える。
「坊主も人間やもん。肉も食えば、妻帯もするし、幽霊も見るってゆーてた。……ても藤やんは、幽霊を見たんじゃなくて、歌を聞いたんやて。せやし、俺が見るねん。」

よくわかんないな、なんか。
幽霊の歌、ねえ。
普通に山登りしてきたヒトが、見晴らしよくてテンション上がって歌ったんじゃないのかな。

「明るい幽霊だね。歌うんだ。」
光くんはそう揶揄すると、ぐるりと周囲を見渡した。
「……鳥の声ぐらしいか聞こえないなあ。」

「藤やん、暗くなる頃に聞いたゆーとったから、もうちょっと遅い時間かも。」

薫くんがそう答えると、光くんが首を傾げた。

「鳥って、フクロウとか夜行性の鳥以外、昼間しか鳴かないイメージだけど。……ナイチンゲールのはずないし。」

ナイチンゲール?

「看護婦さん?」

そう聞いたら、光くんが教えてくれた。

「有名な看護師さんにそんな名前の女性がいたね。でも、この場合は、鳥だよ。小夜啼鳥。」

さよなきどり?

「綺麗な名前ね。どんな鳥?かわいい?」
「かわいいらしいよ。声も綺麗みたい。……でも、日本には生息してないんだよね。」

光くんはそう言ったけど……いた。

かすかに、聞こえる。
高い……か細い……絹のような声って、こんな感じ?
どこから聞こえてくるんだろう。

聴覚に集中してじっとしてる私に、薫くんが気づいた。

「桜子?どしたん?」
「あ……うん。……聞こえへん?歌声。」

小声でそう言ってから、再び耳をすます。

何だろう。
不安定な歌声。

たぶん、あまり……うまくない……ような……。

「歌の練習してるのかな?」
光くんの指摘に私は同意した。

「うん。そんな気がする。高い綺麗な声だけど、声量もないし、音程も怪しそう。……どこで歌ってはるのかしら。」

薫くんだけが不満そう。