小夜啼鳥が愛を詠う

光くんにそう言われて、薫くんは噛みつかんばかりに言った。

「知らんわ。光!塩、撒いとけ!塩!」

「はいはい。」
と、何故かパパが玄関先に塩を撒いた。

……それ以上、何も言わないけれど……パパも、お店の平安のために、もうみゆちゃんの襲来は勘弁してほしいみたい。


「早く諦めてくれるといいね。」
やっと薫くんの隣に座って、私たちは穏やかなひとときを過ごした。




椿さんからラインが入ったのは夜になってから。

<しーちゃんの件、光くんにお礼言っといて。ありがとう。桂介、喜んでた。>

……意味がわからない。

<光くん、何かしたの?>

そう尋ねると、椿さんから、驚いてる表情のスタンプが送られてきた。

<聞いてなかった?朝、しーちゃんと婚約者さんが道に迷ってたら、光くんが案内したげたんだって。その時に光くんが桂介の蔵の宣伝をしてくれたらしくて、お2人で訪ねてくださったの。しかも大口の注文もしてくださったみたい。>

へえ!

<光くん、営業したんだw>
<うん。桂介のお父さんが調子に乗って私の話もしたんだって。しーちゃん、親身にお話聞いてくださったらしくて、初舞台前にお化粧見てくれるって言ってくださったんですって。だから、私もめっちゃラッキー。>
<わ~。よかったねえ。来年よね。あと1年。がんばって。……あ。ねえ。今年、中1になる子が今からバレエと声楽習って、音楽学校合格できるかな?>

返事は、電話でかかってきた。

『もしもし?誰か受けるって言ってるの?』

ちょっと声が怖い……気がした。

「うーん。わかんない。今日ね、しーちゃんが、佐々木未来くんの妹のみゆちゃんに受験を勧めたの。今からで間に合うのかなあ、って。」

そう説明すると、椿さんの声のトーンが低くなった。

『あーーーー。……つまり、あの佐々木和也の娘、か。それだけで合格かも。少なくとも一次は通過決定。』
「やっぱり?……しかも、頭ちっちゃくて、手足長くて、お顔もめちゃめちゃかわいいの。もう、何もできなくても、受かるよね。」

電話の向こうで、椿さんが息をついた。

『うらやましいことね。……身長は?それでおっきかったら、嫉妬しちゃいそう。』

いや、椿さんだって充分恵まれた容姿なんだけどね。