小夜啼鳥が愛を詠う

「……いや、お友達というほどでは。うちに下宿してた子がサッカー部のマネージャーをしてたから、テスト前の部活禁止の期間だけ庭を提供してたんだ。」

松本さんはそう説明して、静稀さんに声をかけた。

「そろそろ行こうか。」
「え?もうそんな時間?」

時計を見て、静稀さんはため息をついた。

「このお店にいるとすぐに時間がたってしまいます。……また、ゆっくりうかがいますね。ごちそうさまでした。」
「ごちそうさまでした。コーヒー美味しかったです。」

さすが結婚前のラブラブカップル……2人は別に特別にイチャイチャしてないのに、ものすごーく仲睦まじい雰囲気を漂わせてお店を出て行った。


「……ママに自慢しちゃおう。しーちゃんがパパのお店に来たって。めっちゃ綺麗で素敵な人だった~。」

私が浮き浮きそう言うと、いつまでも窓越しに静稀さんを眺めてたみゆちゃんが、クルッと振り返ってパパに聞いた。

「みゆとどっちがかわいい?」

「え……。」
突然そう聞かれて、パパは絶句した。

「みゆちゃん。比較することじゃないよ。彼女は大人の女性で、みゆちゃんはまだこれからやっと中学生なのに。」

光くんがそう諭したけれど、みゆちゃんは引き下がらなかった。

「じゃあ、みゆと桜子さんと、どっちがかわいい?」

「みゆちゃん。」
私は即答した。

でも、光くんは
「さっちゃん。」
と平然と言い、薫くんは
「アホか。桜子に決まってるやろ。」
と吠え、パパは
「……さっちゃん。親馬鹿でごめん。」
と申し訳なさそうに言った。

みゆちゃんは、3人の答えが気に入らなかったらしい……まあ、そりゃそうだろう。

普通に、みゆちゃんのほうが絶対かわいいもん。

スラリと八頭身のモデル体型にパッチリしたフランス人形のようなお顔。
甘ったるい、ちょっと舌ったらずな話し方も、すごくかわいいと思う。

でも、この3人は……特別に、私贔屓だからなあ……。

みゆちゃんは、すごい目で私を睨むと、
「負けないっ!」
と、カワイイ声で決意表明して、お店を出て行った。


「……行っちゃった。怒ってた……。」

そうつぶやくと、光くんがポンポンと私の肩を叩いた。

「お疲れさん。……や~、薫、大変な子に惚れられちゃったねえ。どうすんの?あれ。諦めないんじゃない?」