小夜啼鳥が愛を詠う

「お姉さま?……え?」

すかさず、薫くんが大きくうなずいた。
「俺のモンや。」

薫くんはわざわざ、繋いでる手をあげて、みゆちゃんにアピールした。

みゆちゃんは、私達の手と、薫くんのお顔と、私を何度も見て……首を傾げた。

まだ飲み込めないらしい。

……まあ……想定外の相手だったんだろうけど。
私は光くんとつきあってると思ってたんだもんね。

薫くんは、要領を得ないみゆちゃんに、舌打ちした。

……薫くんとつきあいはじめて気づいたけど……けっこう冷たいのよね……私以外の女性には。
特に自分に好意を抱いてることを察知すると、必要以上に冷酷というか。

めんどくさいのかな。

私には、ベタベタに甘いのに……。

「薫くん……。お行儀悪い。」
一応、そうたしなめた。

「あ。ごめん。うざくて。つい。」
薫くんは私にそう言ってから、みゆちゃんをジロリと見た。

「薫くん!失礼!」

慌ててそう言ったけど、薫くんはわざときつく言ってるらしく、無表情だった。

「うざい……。」
みゆちゃんは薫くんの心ない言葉を反復すると、すっくと立ち上がった。

帰るのかと思ったら、みゆちゃんはトイレへと駆け込んだ。

「……あ~あ~。パニクってるんじゃない?彼女。」
「どうしよう。……様子、見てきたほうがいいかな。」

衝動的に自傷とかしないよね?

心配になってそわそわしてると、奥のテーブル席から静稀さんが立ち上がったのが見えた。

「お手洗いかな。どうしよう。」
「いや、さっちゃん、僕が、」

「ほっとけや!」

薫くんの引き止める声を背中に、光くんと2人、静稀さんより前にトイレへと向かう。

「みゆちゃん。大丈夫?」

私がそう声をかけると、ドアの向こうから嗚咽まじりの小さな声。

「……馬鹿みたい。」

泣いてる~~~!
どうしよう!

オロオロして光くんを見上げた。

光くんは、苦笑してから、ドアをノックした。

「みゆちゃん。ここ、お店のトイレだよ。泣くなら奥のお部屋貸してあげるから出てきてくれないかな?他のお客さまが待ってらっしゃるから。」

状況を正しく伝えて諭す光くんの言葉は、ちゃんとみゆちゃんに届いたらしい。

ガチャガチャと音がして、顔を真っ赤にしたみゆちゃんが飛び出してきた。