小夜啼鳥が愛を詠う

「202が終わったら210をかけてください。『おお ほほえむ吉日、願ってもない佳節』を。」

……ナンバーで言うんだ。

「かしこまりました。……『佳き日、めでたき時』ですね。」

パパはニコニコして、CDを2枚選び取って、みゆちゃんの前に置いた。

「どちらがお好みですか?」

みゆちゃんは首を傾げた。
「わかりません。プロの演奏をちゃんと聞いたことがないので、お任せします。」

「では、こちらを。ポピュラーなモノがよいでしょう。」

そんな話をしてる2人から完全に身体ごと背けて、薫くんが私を心配そうに覗き込む。

「大丈夫。それより、薫くん、汗だく。どうしたの?」
ハンカチを出して、そっと薫くんのひたいにあてた。

「……光が……桜子が泣いてるゆーから……誤解しとったらかわいそうやと思ってんけど……泣いとらんかった?」
「ちょっとだけ。……誤解は、してないと思う。……心配は、した。大丈夫?みゆちゃん……。」

みゆちゃんに泣かれて心が揺れなかった?……とは、さすがに聞けなかった。

薫くんはそっと私の手を取ると、両手の中に包み込んだ。
「桜子、優しすぎ。でも、ごめん。心配させて。ここで桜子を待っとったら、みゆが怒鳴り込んできよって泣きわめくから、店に迷惑やと思って、外、出とった。」

「……じゃあ、私が泣いてるって光くんに聞いて、今度は私を連れ出しに来てくれたんだ。……みゆちゃんも一緒に。」
最後は蛇足だったかな。

薫くんは、顔をしかめた。
「違う。みゆは勝手に来た。」

「だって、意味わかんない。薫のそばにいたくて帰国したのに、彼女がいるから近づくなって!ひどいと思いません!?お姉さま!」

みゆちゃんは、薫くんの肩ごしに顔を出して、私にそう同意を求めた。

「しぃーっ。」
と、お水を持ってきてくれた光くんが、みゆちゃんにゼスチャーした。

みゆちゃんは慌てて口元を両手でおおった。

……かわいいなあ。

やっぱりこの恋のライバルのことを、むしろ好意的な目でしか見られそうにないわ。

私は苦笑して、みゆちゃんに小声で言った。
「みゆちゃん、ごめんね。私なの。……薫くんのこと、好きなの。」

「……はあ?」

みゆちゃんは、ぽかーんとして、それから、ものすごく懐疑的に反応した。