小夜啼鳥が愛を詠う

「私より背が高くて、力も強くて、包容力があるヒトのこと、ガキだとは思わない。……ずっと呼び捨てにされてるし。」

頬が熱い。
鼓動が激しくなる。

でも、薫くんも、たぶん……同じ気持ち……。

掴まれた手から、伝わってくる。
緊張と、興奮と、……愛情。

好き。

大好き。

ねえ?
ちゃんと、私の気持ち……届いたよね?



「薫~。さっちゃん。海行こう~。」

間延びした声で、光くんにそう呼びかけられ、薫くんと私は慌てて少し離れた。

……しまった……告白するにしても、時と場所を選ぶべきだった……。
光くんのパパとママにも、たぶん……気づかれちゃった……よね?

う……。
は、恥ずかしい……。

……ま、いっか。
今さら、だよね。

「また行くの?……彩瀬さん、出てこない?」

何事もなかったかのように話すことはできなかった。
どうしても、頬が緩んでしまう。

光くんも満面の笑みを浮かべていた。
全て、お見通しみたい。

その上で、わざわざ再び誘い出すってことは……

「さあ?でも、僕が海辺のお散歩好きなの、彩瀬パパの影響だと思うんだよね。1人でもいいけど、また、海に入っちゃうと、このシーズンだから入水自殺と思われちゃうかも。」
言わずもがななことをいけしゃあしゃあと言う光くん。

たぶん、光くんとパパとママの手前、誤魔化してくれた……のかな?
まさか、邪魔したわけじゃないよね?

「わかった。桜子、そのバスタオル持って来て。光はビーチサンダルと半パン着用な。」
薫くんはそう言って、玄関の靴箱から季節はずれのビーチサンダルを出した。

「え~、やだよ。寒いもん。」

……いや、海に入って濡れた靴履いたままだって、充分寒いでしょう。

薫くんは、ぶーぶー文句を言う光に容赦なくビーチサンダルを持たせた。

もしかしたら、薫くんのほうには、多少、光くんに邪魔されたという認識があるのかもしれない。

くすぐったいような、うれしいような……やっと訪れた幸せに浸ってると、不意に光くんが私に手を差し出した。
いつも通りのことなんだけど……何となく、私は、光くんの手を取る前に、薫くんを見た。

薫くんと、目が合った。

一瞬だけど、視線が絡み……それだけで心が通じ合うような気がした。

いや、実際、私の逡巡はちゃんと薫くんに伝わった。