小夜啼鳥が愛を詠う

……いや……それって、彩瀬さんがケダモノになってしまう可能性もなきにしもあらず……か。
さすがに、実の母と息子の身体で……は、まずいよね。

う……。

想像したら、恥ずかしくなってきた。

「したことない。でも、今度やってみるね。」
光くんは、妄想に恥じ入る私に、艶然とほほ笑んだ。


別荘に帰り着くと、光くんのパパとママはお買い物にでも出てるのか、誰もいなかった。

「あれ?……いない。」
「ほら、光!着替えっぞ!桜子、お風呂頼む!」

明らかにしょんぼりした光くんを、薫くんは引きずるように引っ張ってく。

「うん。あ、薫くん!光くんだけじゃなくて、薫くん自身もちゃんと着替えて温まってね。いつも自分は後回しなんだから……。」

聞こえてるのか聞こえてないのか、2人はバタバタと行ってしまった。

……とりあえず……バスタブにお湯入れようっと。


お湯から上がった2人にジンジャーティーを届けに上がった。

ついでに、濡れた衣服とバスタオルを洗濯しようと一階に降りて来たところで、車のエンジン音が聞こえた。
ドタドタと音を立てて、光くんが階段を駆け下りてきた。

「あーちゃん!お帰りなさい!」

光くんは、左手でママの荷物を持ち、右手はママの背中に手を回していた。

まるっきり恋人を気遣ってるようにしか見えない。

まあ、仲睦まじくって……ほほえましいよ。

うん。

薫くんは顔をしかめて、遅れて降りてきた。

私のすぐ横に立つ薫くん。
まだ乾ききってない髪から、爽やかなシトラスの香りが立ち上ってきた。

……やばい。

ありふれた香りなのに、薫くんだと、どうしてこんなに蠱惑的なんだろう。

日焼けした首筋も、精悍な顎も……私には目の毒過ぎて……

私は薫くんではなく、光くんを眺めて心を落ち着けようとした。

「……ったく、マザコンだよな。」

薫くんがつぶやく……ああ、こっちを見ないでぇ。

「うん。まあでも、光くんのあのとろけそうな目……幸せそう。」

視線をはずしていても、薫くんが私を見つめてると思うと、それだけで胸の奥が熱くなってくる。

「心、広いよな、桜子。あいつのマザコン、一生治らんで。」
薫くんは、苦笑交じりにそう言った。

……薫くん……まだ、そんなこと言う……。

もう……。