小夜啼鳥が愛を詠う

光くんは、野木さんの独り言のふりをした告白を黙殺して、桜を見上げた。

「ほら、さっちゃん。今年の桜もきれいだよ。」

まるで光くんの賛美に応えるかのように、風もないのに桜の木々がそよぎ、桜の花びらがひらひらと舞った。

「ほんと。綺麗……。」

桜吹雪の中でたたずむ美男美女の2人。

野木さんも、体育館から出てきたパパやママたちも、見知らぬ生徒や保護者までも、見とれ、撮影してしまうほどに、美しい情景だったそうだ。

そうして、光くんと私は、入学したその日から、恋人同士と勘違いされて周知されてしまった。



パパたちと合流したあと、ランチに行った。
少し足を延ばして、南京町で広東料理を食べた。

光くんのパパとママは、入学式から早速、光くんが私に迷惑をかけたと恐縮していた。
確かに想像してた以上だったけど、大丈夫!

「さっき、私以外にも、光くんが普通にお話できる女の子も見つけたんですよ。たぶんこれからもっと、そーゆーお友達が増えると思います。ね?光くん。」
いくぶん楽観的にそう言った。

光くんはママにべったりで私の話なんか聞いちゃいないように見えたけど、
「うん。僕もそう思う。大丈夫だよ。」
と、ママには心配をかけたくないのか、飄々とそう言った。


光くんのお家までは、パパが愛車で送ってくれた。

「おかえりー!桜子!綺麗!めっちゃ綺麗や!セーラー服、一番似合ってる!」

特徴的なエンジン音だけでパパの車とわかったらしく、家から飛び出してきた薫くんが、私をほめちぎってくれた。

「あはは。ありがとう。」

薫くんは、セーラーカラーを引っ張ったり、上に上げたり、やりたい放題いじったあと、高らかに言った。

「桜子、あそこ行くで。光も来るけ?」

あそこ、ね。

薫くんは、相変わらず、私をあちこちに引っ張り回す。
でも最近はまた、あの小さな洋館がお気に入りだ。
お友達の藤やんが幽霊に出会ったらしく、薫くんはうらやましくてしょうがないのだ。

「幽霊探し?……ふふ。いいよ。さっちゃん、いい?連珠の続きはまた今度でも。」

光くんの誘いを私が断れるわけがない。
幽霊とか言われるとちょっと怖いけど。

「やった!光が一緒やったら幽霊も出てくる気がする!」
薫くんはいつもより鼻息荒くそう言って、おばあちゃんにたしなめられていた。

「薫くん、あんまりはしゃいで、桜子ちゃんを困らせちゃダメよ。光くん、気をつけてね。」