小夜啼鳥が愛を詠う

急いで別荘に戻ると、バスタブに熱いお湯を溜めた。
ついでに、暖炉に薪を多めにくべた。

2人はワイワイ騒ぎながら、お風呂であたたまり、パジャマに毛布を羽織って暖炉のそばにやってきた。
なるほど、光くんと薫くんの荷物は、夜に光くんママが持って来てくれるから……ココには下着とパジャマぐらいしかないのかな。

「はい。これ。紅茶にブランデー垂らしたよ。」

2人にティーカップを渡してから、私も飲んだ。

せっかくのニルギリの爽やかな香りは飛んでしまったけれど……カミュの香りも好きだから、まぁいいか。

「……で?光くん、どうしたの?自殺しようとしたわけじゃないよね?」
冗談っぽくそう聞いてみた。

光くんは苦笑した。
「動機がないよ。……よくわからないんだよね。気がついたら、薫が怒ってた。……彩瀬パパじゃない?」

……何、それ。

「彩瀬さん、胃癌で亡くなったのよね?何で今さら、入水自殺しようとしてるの?」

そう聞いてみたけど、光くんもよくわからないらしく、曖昧な笑顔で苦笑していた。



夕方、まだ暗くなる前に、光くんママが来てくれた。

「あーちゃん来たっ!」

光くんには、車の音が聞こえたらしい。
急に立ち上がって、玄関から出て行った。

「……光くんて、耳いいよね……ママのことだけは。私、全然わかんなかった。薫くん、聞こえた?」

私も玄関へと向かいながら薫くんにそう聞いた。

「いや。聞こえん。……てか、お母さんのことだけは、特別。彩瀬さんの執念やろ。」

……あ……そういうこと。

すごいなあ。
死してなお、だもんね……。

「そこまで愛されるって、すごいことね。」

しみじみそう言ったら、薫くんはマジマジと私を見て、それから首を傾げた。

「でも俺は、ずーっと変わらずお母さんだけを愛しとーるお父さんのほうが、えらいと思う。」

薫くんの言葉に私はドキッとした。

……確かに、頼之さんは、そういうヒトよね。
私もすごく素敵だと思う。

彩瀬さんは……魔性だったんだもんね。
いっぱいお相手いたんだろうな。

……薫くんも、一途であろうとしてるのかな。

何か、ドキドキしてきた。

ん?
今、早速、告白のチャンス?

「薫くんっ!あのっ!私もね!」

勢い込んでそう言ったら、薫くんは顔を歪めた。