小夜啼鳥が愛を詠う

「うん。僕も。……あーちゃんに、マチネのお水、くんできてもらおうっと。」
光くんはそう言って、すぐにスマホをいじりだした。

「……マザコンめ。」
薫くんがうめくように、低くつぶやいた。



「海に行こう。」
コーヒーを飲み干すと、光くんがそう誘った。

「行く!……桜子、浜はさぶいから、いっぱい着て行きや。」
薫くんにそう言われて、私は、薄いダウンをコートの下に重ねた。

それでも、海辺はやっぱり寒かった。
風が……つべたーい!

「ダメ!薫くん!さぶい!」

「おー!すげー風!うぉー!!!」

薫くんは、ベンチコートを脱いで私に着せてくれると、砂浜を走り出した。

青春ごっこ、かな?

私は羽織らせてもらったベンチコートを抱きしめるように両手で掴んで、薫くんを目で追った。

波と追いかけっこをする薫くんは、まるでサッカーボールと戯れているように見えた。

遊んでるようで練習してるのかな。
……練習に……なるのかな?


突然、薫くんが海に向かって怒鳴った。
「光!お前、何してんねん!!」

……え?

光くん?
どこに?

薫くんは、波打ち際に向かって突進した。

ええっ!?

海!?
嘘!
海に入ってく気!?

びっくりして見てると、薫くんはざばざばと海に入り、どこからか光くんを掬いあげた!

光くん……まさか、溺れてたの?

いや、意識はあるみたい。
どういうことだろう。

「光くん!!薫くん!!」
慌てて私も駆け寄った。

「……あ……さっちゃん……」
頭までずぶ濡れの光くんは、ぼんやりと私を見上げて、ニコーッと子供のように笑った。

「どうしたの?こんな真冬に海に入るなんて……心臓麻痺で死んじゃうよ。」

てか、タオルもないし、どうしよう。

全然たりないけど、私はハンカチを出して、薫くんのお顔や髪を拭こうとした。

でも光くんは苦笑した。
「いいよ。帰って着替えるよ。……意外とね、海の水、あったかいから、大丈夫だよ。むしろ、今のこの気温と寒風が、つらい。」

「当たり前や!あほか!」

薫くんは、濡れた服を一旦脱いで、海水をしぼってから再び着て、ぶるっと震えた。

大変!

「とにかく帰ろう!すぐあったまらないと。」