小夜啼鳥が愛を詠う

濃い赤い地に、大きなきんきらきんの刺繍。
いわゆる、金襴緞子の帯ってやつ?

色とりどりの大きな花と、御所車?花車?……優雅な王朝絵巻。

これもすごいわ……。

「ありがとう。パパ。ママ。一生、大事にする。」

そう言ったけど、ママはニッコリうなずいた。

「まあ、一生って言っても、それ、一応振袖だから、結婚するまでしか着られないけど。」

う……。
結婚……。

私は気恥ずかしくて押し黙り、パパは不機嫌そうに口をつぐんだ。

ママはパパと私の反応がおかしかったらしく、弾けるように笑い出した。

……楽しい、幸せなクリスマスイブの夜だった。



25日のお昼過ぎ、光くんと薫くんが迎えに来てくれた。

「荷物でかっ!」
私のスーツケースを見て、薫くんがそう言った。

「そりゃそうだよ。1週間分だもん。ね。貸して。」
当たり前のように、光くんがスーツケースを持ってくれた。

「……ありがとう。」
いつも悪いなあと思って、それでもなるべく荷物を減らしたつもりなんだけど……冬休みの宿題もあって思ったよりも小さくならなかった。

今日から大晦日まで、私たちは小門家の須磨の別荘で過ごす。
光くんのパパとママは、まだ会社があるので、夜と土日しか来られない。

光くんと薫くんと、私……3人だけの楽しい時間。

……勉強する時間なんかないかな?


うちから須磨までは、最寄り駅から乗り替えることなく30分足らずで到着することができる。
阪神、神戸高速線、山陽電鉄……と、厳密には3社の電車の路線を通ってるのに直通なんて、楽ちん!

ただし、電車を降りてからが大変。

別荘は線路よりも山手にある。
直線距離はそんなにないけれど、ずーっと坂。

坂道は慣れっこの光くんや薫くんは平気そうだけど、私はすぐに息を切らしてしまった。

「桜子。大丈夫か?」
繋いだ手に、ぎゅっと力を入れて、薫くんが引っ張ってくれた。

「うん……けっこう……しんどい。久しぶりで……。」
「さっちゃん。おんぶしたげようか。薫。スーツケース頼むよ。」

光くんもまたそう言って、私の手を引いた。

でも、薫くんは私の手を離さなかった。

「あの……両方向から引っ張られると……痛い……」

恐る恐るそう訴えると、慌てて2人は手を放してくれた。

……照れくさいな、こういうの。