小夜啼鳥が愛を詠う

中には、淡い桜色の地の……これは……小紋?

白い八重咲きの……桜の花?
中央部だけがほんのりと桜色で、すごくかわいい。

あれ?
これは?
流水?

全体像がわからない。

ちょっと困ってると、パパが画像を見せてくれた。

「ほら。これ。」

パパのスマホには、衣紋掛けにかかった着物の全体図が写っていた。

まるで華やかな日本画のように、着物と長めの袖にわたって描かれているのは……八重のヤマザクラ系の桜の木。
斜めに枝が走り、かわいらしい多弁の桜が咲き乱れ、ところどころに赤い小さな葉がアクセントになっている。
そして、背景に金と銀の糸で繊細に刺繍されてるのは、やっぱり流水みたい。

「素敵……。振袖?」

てか、これって……作家モノじゃない?

「中振袖よ。パパが雑誌で見て、一目で気に入ったの。」

雑誌……。

「もしかして、ものすごーく高くなかった?これ。」
恐る恐る聞いてみた。

パパは口をつぐみ、ママはニッコリとほほえんだ。

「さっちゃんは、そんなこと、考えなくていいの。ママもさっちゃんに似合うと思ったから誂えてもらったの。」

……絶対高いわ……これ。

困ったな。
こんなの、私が着ちゃっていいのかな。
汚したらどうしよう。

「……初詣ぐらいじゃ……もったいない?」

たとう紙を閉じながらそう言ったら、パパがぶるぶると首を横に振った。

「そんなこと言ってたら着る機会ないよ。いいから、それ、着なさい。……なっちゃんも、着物で行くか?」
パパにそう言われて、ママは手を振って断っていた。

……ママはそんなに好きじゃないみたい。

「ママも似合うのに。……一緒に着よう?」

そう聞いたら。ママは顔をしかめた。

「さっちゃんみたいに着慣れてないから、しんどいの。特に、草履が無理。」

そっかあ。
残念。

「それにしても、可愛い桜。ひな菊みたい。」

そう言ったらパパが教えてくれた。

「日吉桜というそうだよ。」
「ひよし……日吉(ひえ)大社の日吉(ひよし)?」

パパはうなずいて、それから、やや小ぶりのたとう紙を開けてくれた。

「で、こっちが帯。お揃いってわけじゃないけど、作家さんが選んでくださったからピッタリだと思うよ。」

うわっ!