小夜啼鳥が愛を詠う

「やばい。野木、興奮してる。クラスの観察対象候補2人がイチャイチャしてる。あぁ、メモない。そうだ。写真写真。」
なぜか、野木さんは携帯で、椿さんと私の写真をバシャバシャ撮った。



一旦教室に戻ったものの、終礼はすぐ終わった。
体育館に残った保護者と合流する子が多いみたい。

椿さんは、今日はバレエと声楽のお稽古があるらしく、颯爽と走って帰ってった。


「古城さん古城さん。小門兄。」
野木さんが指差した先……廊下に面した入口ではなく、中庭側の窓の向こうから光くんが覗いていた。

「わ。どうしたんだろ?あんなところから。」
驚いて、窓に駆け寄ろうとした。

「もしかして小門兄、教室から逃げ出したのかも。……小学校の時も、保健室と図書館登校だったから……。」
背後から聞こえてきた野木さんのつぶやきに、胸が痛んだ。

光くん……。
さっそく、教室に居づらい空気を感じちゃったのかな。
かわいそうに……。


「光くん。お待たせ。一緒に写真撮ろう。体育館にまだパパとママがいると思うから撮影してもらおう。」

窓を開けてそう言ったら、光くんはうれしそうにうなずいた。

何となく、教室に残ってた女子から、光くんに対する秋波と私に対する呪詛を感じたけど、無視無視。



「……さっちゃん、野木さんと友達になったの?」
なぜか一緒にやってきた野木さんに、光くんは首を傾げてそう聞いた。

「え!うわっ!野木、感激した!……小門兄が野木のこと認識してるって、知らなかった!」
野木さんは本当にうれしいらしく、両の拳を握ってぷるぷる震えた。

漫画のような反応に、光くんが楽しそうに目を細めて笑った。
……どうやら、光くんは、野木さんのことは苦手じゃないらしい。

「そりゃ知ってるよ。去年同じクラスだったじゃない。……まあ、僕はあまり、その、教室にいなかったけど。野木さんは曇りのない真っ直ぐな目で見るから、怖くないよ。」

光くんの言葉に、ピンときた。

「もしかして、野木さんが光くんを観察対象としてることを、逆に光くんは面白がって野木さんを見てた?」

そう聞くと、光くんはニコニコうなずき、野木さんは眉間にしわを寄せた。

「くっ。不覚。そんなことなら、野木が勇気を出して告っときゃ、あるいは、小門兄をゲットできたのか!」

どこまで本気なのか、野木さんは大げさにそう嘆いた。

光くんと野木さんのカップリング……?
想像できないわ、それ。