小夜啼鳥が愛を詠う

自信を持ってそう言ったら、野木さんは真面目に言った。

「……さくら女、気づいてないの?小門兄にとって、さくら女は充分過ぎるほど、特別だって。」

特別?

「まあ、幼なじみだし……。でも、あくまで、ママの望む嫁として合格ってレベルでしょ。」

言ってて、悲しくなってきた。

私は、光くんにとって、対象外。
しょせん、発情期の光くんにすら手を出されることもない。

思わず、野木さんに言っちゃった。
「ずっとずっと、光くんが好きだったわ。光くんの全てが欲しかった。……でも光くんは、そうじゃないって思い知らされて諦めたの。……だから、野木さんがうらやましい。」

野木さんはなんとも言えない顔になってしまった。

「あ。ごめん。責めてないから。わかってたつもりだけど、やっぱり私じゃダメだったんだなあ、って……改めて再認識しただけ。」

慌ててそう言ってみたけど、気づいちゃった。
自分の中にもやもやと黒い闇が広がってることに。

……これって……嫉妬かもしれない。

今さら?

うわぁ……。
私って、わがまま。

みゆちゃんだけじゃなく、野木さんにまで嫉妬するなんて。

独りで悶々としてると、いつの間にか野木さんがスケッチし始めていた。

「……何、描いてるの?」
気恥ずかしくなってきた。

野木さんは真剣そのものの顔で、手を休めることもなく言った。
「さくら女。そんな顔、珍しいから。……さくら女にもあったのね……独占欲。」

独占欲!
そっか!

「そう、それだわ!独占欲!……頭ではわかってたつもりだったけど、やっぱり、淋しいみたい。相手にされなかったこと。」

「……野木が言うことじゃないと思うから、言わないつもりだったけど……さくら女、わかってない。小門兄の気持ち。……まあ、小門兄がそう仕向けてきたんだろうから仕方ないけど。でも、いい加減、小門兄がかわいそう。」
野木さんは無表情にそう言った。

「仕向けてきた……?」

意味がわからない。

「私に気がないから適度な距離を保ってきた……って思ってるんだけど……」

そう言ったら、野木さんはじっと私を見つめた。

……睨まれたわけじゃない……と、思う。

多少ひるんで、野木さんの視線に耐える。
心の中まで見透かされそうな瞳。

嘘は言ってないはずなのに、私はだんだん自信がなくなってきた。

自分の気持ちを見つめ直す……。