小夜啼鳥が愛を詠う

「……そうね。……て……まさか、光くんもパリに行くとか言わないよね?」
ちょっと不安になった。

「……いや、小門兄は、明田さんに懐いてるから、平気で行くとか言いそうだけど……明田さんがかわいそう。そーゆー関係でもないのに。」

野木さんの言葉に私は首を傾げた。

「そーゆー関係じゃない?……ない?」
思わず二回聞いてしまった。

野木さんの目がキラッと輝いた。
「さくら女?……やっぱり疑ってる?……明田さんと小門兄のこと。」

ドキッとした。

「……傷つかない?」
恐る恐るそう聞いてみた。

「誰が?私?……何で?」
不思議そうな野木さん。

「だって、野木さん、明田先生のこと好きなのに……相手が女性でも、男性でも、嫌じゃない?」

そう聞いてみたら、野木さんはちょっと笑った。

「野木の好きは、椿氏の好きとは違うから。どっちか言うと、さくら女が、今、小門兄を見守ってるのに近いかも。……もうね、明田さんが幸せならそれでいい。でも、明田さん、ずっと苦しんでたから……つらい。」

野木さんは絶句してまた涙をこぼした。

「えーと……苦しんでらしたの?……あのね、私が見たのは……毛布にくるまった裸っぽい光くんの寝顔を描いてた明田先生なんだけど……先生も裸っぽかったのよね……。」

言葉にすると、あの時のショックが蘇ってきそう。
どう見ても、事後って感じだったんだもん。

でも野木さんの涙はピタリ止まった。
「それって、いつの話?……もしかして、11月の……朝秀家の登り窯に初めて行った日?」

「え……えーと……どうだったかな……えーと、私、熱出して……あ、そうそう。その日だった。……て、何で知ってるの?まさか、野木さんも……見た?」

恐る恐るそう尋ねると、野木さんは苦笑した。

「見たというか、居たというか……。そっか。さくら女、それで、誤解したんだ?……あれ?じゃあ、もしかして、小門兄のことを諦めたのも?それがきっかけだったの?……てっきり小門弟にほだされたんだと理解したんだけど。……えーと……ごめん、あの夜のことなら、たぶん誤解してるんじゃないかな?」

「え……。」
意味がわからない。

私は、野木さんの説明を待った。