小夜啼鳥が愛を詠う

お酒でキャラがかわってるとはいえ、藤巻くんが物事に執着してるの、はじめて見たかも。
常に中庸って感じなのに……。

そっか。
もしかして、みゆちゃんが初恋なのかしら。

……で?
みゆちゃんは、薫くんのことを気に入ってたっぽかったわ。

薫くんは……今のところ、めんどくさがってるけど……。
うーん……。


「みゆちゃん、かわいかったね。」
ランチの時、だいぶしらふに戻ってるっぽい薫くんに、さりげなくそう言ってみた。

「そうけ?」
薫くんは、興味なさそうにそう言った。

内心ホッとしつつ、突っ込んで聞いてみる。
「未来くんとも仲良くなってるみたいだけど、家族ぐるみのおつきあいなの?」

「へ?……いや、昨日はじめてや。未来さんが、お父さんの佐々木和也さんに、光と俺の話をしはったらしくて、わざわざ一家でうちに挨拶に来てくれはってん。」

……昨日……。
なのに、薫くんもみゆちゃんも、呼び捨て……。

君ら、コミュニケーション能力高過ぎじゃない?

「えーと、頼之さんが高校サッカー部のキャプテンだったとき、佐々木和也が一年生なんだったよね。……息子達は逆になりそうね。未来くんが中学サッカー部三年生で薫くんは一年生だもんね?」

そう確認すると、薫くんはニヤリと笑った。

「それだけちゃうで。佐々木和也さん、うちのお母さんのこと、好きやってんて。高校時代。でも、お母さんにはお父さんがいたから、卒業式の日に告白して玉砕したんやって。」

へえ!
さすが、光くんママ。

「……それで調子こいて、みゆが俺にちょっかい出そうとしよってん。うざかったわ。」
さすがに薫くんの口振りは、目に余った。

「薫くん、ひどい。みゆちゃん、かわいかったけど。」

薫くんがみゆちゃんのことをよく言わないことに、たぶん私は溜飲を下げていた。

ひどいのは、私のほうだ。

罪悪感を覚えないと言えば嘘になる。
でも、それよりも、心に生じた嫉妬心のほうが怖かった。

「俺には、桜子のほうがかわいい。着物かて、あんなゴチャゴチャした品のないんは嫌いや。」
薫くんは、意識してないのだろうけれど、あっさりと汚い私の心を吹き飛ばしてくれた。

モヤモヤきた気持ちは嘘みたいに消えた。

昨日も同じようなことを言ってくれたのに……私って……馬鹿だわ。

「……ありがと。じゃあ、おばあちゃんが須磨から帰って来られたら、また、お着物着せてもらいにうかがおうかな。」

そう言ったら、薫くんは飛び上がって喜んでくれた。