小夜啼鳥が愛を詠う

「……うん。薫くんは、かわいいし、かっこいいよ。……でも、一途かどうかは知らない。かわいい女の子につきまとわれたら、コロッと落ちるんじゃないの?」
そして、珍しく私はやさぐれていた。

「あら。」
と、玲子さんが私をじっと見た。

好奇心いっぱいの目。
「なぁに?あいつ、浮気してんの?生意気!」
「浮気も何も……薫くんは、誰のモノでもないし。」

どんどんこじらせてるかも……私。
卑屈だわ。

「ふーん?……じゃあ、さっちゃんのモノにしちゃえば?先手必勝。」
玲子さんは、とんでもないことを言った。

「……できないよ。」
私はそうつぶやくしかできなかった。


朝礼では、元日らしく、乾杯があった。
もちろん、未成年の私たちはジュース……のはずなのだけど、
「カルピスや。」
と、年嵩のボランティアさんは、おもしろがって、薫くんや藤巻くんに濁り酒を飲ませていた。

……大丈夫かな。

まあ、大丈夫ではなかった。
薫くんはテンションが上がって大笑いしてるし、普段は大人びた藤巻くんもデレデレになってしまっていた。

「あーあ。お茶飲んで。はい。藤巻くんも。」
酔っ払ったパパにいつもママが言うように、私はお茶を2人に差し出した。

「ありがと~。桜子さん、優しい~~~。」
藤巻くんは珍しく私に甘えようと顔を近づけてきた。

ら、薫くんがそれを止めた。
「あかん。」
そして、薫くんは私を背後に庇った。

……うれしいけど……いや、別にそういうシチュエーションではないから……この場合、むしろ、薫くん、邪魔。

「はいはい。薫くんもお茶飲んで。いっぱい飲んで。」
薫くんは満足そうに私からお茶を受け取って口を付けた。

「あーあ。もう飛んじゃったかな。みゆちゃん。」
藤巻くんが空を見てそうぼやいた。

「まだやろ。東京の家に行くゆーてはったで。未来さん。」
「みゆちゃんも?一緒?」
「そらそーやろ。……てか、藤やん、しつこい。どこがええねん。あんなわちゃわちゃしたん。」
「……かわいいやん。」

私は、他のボランティアさんにお菓子を配りながら、背後の2人の話から耳をはなせなかった。

……えーとぉ……。
つまり、藤巻くんは、佐々木みゆちゃんに気がある、ってことよね?