小夜啼鳥が愛を詠う

「あの子……みゆちゃん?……薫くんのことが好きなのね。さっちゃん、ライバル登場ね。」
無事にお詣りを済ませて、小門一家と離れてから、ママが楽しそうに言った。

「ライバルって……。」
パパは苦笑してる。

でも私だけは笑えない。

「……あんなにかわいい子に迫られたら、その気になっちゃうよね。」
落ち着こうとしてるのに、なぜか自虐的なこと言っちゃった。

「あら、でも、あの子はご両親と一緒にフランスで暮らしてるんですって。だからすぐにまたフランスに帰っちゃうと思うけど。あおいちゃん、そう言ってたわよ。」
いつの間にか、ママは光くんママからみゆちゃんの情報を聞き出していたらしい。

「じゃあ、このお正月休みだけなんだ。」
ちょっとホッとした。

あれだけ好意をあからさまに表現してたら、薫くんだってすぐにほだされちゃう。

「そりゃそうでしょ。薫くんと同い年らしいから、まだ小学生でしょ?さすがに、未来くんのように、親元と離れて暮らすわけにはいかないでしょ。」

ママの言うとおりだ。
大丈夫。
一時的なこと。

……なのに、私の不安が消えることはなかった。

みゆちゃんだけじゃない。
今まで、私、知らなかっただけで……小学校には、薫くんを慕う女の子が、たぶん、いっぱいいるんだ。
薫くんにふさわしい年回りの女の子。

……私は……どう足掻(あが)いても、彼女たちのライバルにもなれない。
あくまで対象外なんだろうな。

泣きそう。
せっかくの初詣。
せっかく、薫くんと逢えたのに……。
先行き不安。


帰宅してすぐ眠るつよもりが悶々と過ごしてしまった。
完全に寝不足状態で、玲子さんのお迎えを受けた。

「さっちゃん、大丈夫?もう一日、休んだほうがよくない?顔色悪いわよ。」
「大丈夫。もうあまり痛くない。てか、ヒト少ないし大変でしょ?行く。」

使命感と、薫くん恋しさに、私は寝不足を無視した。

「桜子ー!おはよー!」

いつも通り、薫くんは門の向こうから、ぶんぶんと手を振って迎えてくれた。

「……あいつ、昨日もさっちゃんが来るのを、あそこで首を長くして待ってたわよ。あそこまで一途だと、かわいいわね。」

珍しく玲子さんが薫くんを褒めた。