小夜啼鳥が愛を詠う

「あ。じゃあ、佐々木未来くんの……妹さん?」
「はい!」

……妹さんがいたんだ。
知らなかった。

「私は、古城桜子です。みゆちゃんは、フランスから来たの?」

みゆちゃんはうれしそうに何度もうなずいた。
「綺麗なお名前!大和撫子だわ!素敵ー!」

……めちゃめちゃほめられてる。

「みゆ。迷子になるよ。ママが心配してる。……あ。」
噂の佐々木未来くんが現れた。

薫くんが泣きついた。
「未来さーん!助けてください!」

「いや、薫が行っちまうから。みゆ。ママのところに戻って。もう帰るよ。」
未来くんは妹にそう言った。

「えー。やだ。薫と一緒に初詣するー。」
「うちは、もうお詣りしただろ!明日の出発早いんだろ。ほら、帰るよ……じゃ、失礼します!みーゆ!」
「薫ー!」

いつまでも薫くんに未練たらたらな妹の首根っこをつかんで、未来くんは人ごみの向こうに消えてった。

後に残された薫くんは、どっと脱力してしゃがみ込んだ。

「……おつかれ。」
光くんが同情的に、薫くんにそう声をかけた。

「疲れた。……未来さんの手前、邪険にできひんし……勘弁してほしい。」

「……まんざらでもなさそうに見えたけど。みゆちゃん?かわいい女の子ね。」
そんなつもりはなかったけど、すごく嫌味っぽくなってしまった。

でも薫くんには悪意は通じなかったみたい。

「そうけ?桜子のほうがずっとかわいいで。あいつ、めんどくさい。」

……薫くんの、バカ。
そんな風に言われたら……ダメだ……泣いちゃう。

どんなに薫くんが私を「かわいい」と言ってくれても……私は、薫くんより5つも年上で……。
光くんとはお似合いでも、薫くんとは……。

「そうだよ。さっちゃんは綺麗でかわいいよ。自信持って。」
光くんが背後からそう囁いてくれた。

ゾクッとするぐらいイイ声でそんなこと言ってくれちゃって。

肩に置かれた光くんの手が、すごくあったかい。
その手に頬をすり付けて甘えたい衝動にかられた。