小夜啼鳥が愛を詠う

「あ。見えた。サッカー選手の佐々木和也だ。なるほど。めっちゃ撮影されて、サインと握手せがまれてる。……かわいそ~。」
背伸びしたパパがそう実況してくれた。

「佐々木和也くん!いいな~。ママ、昔、インターハイで見たことあるけど、かっこよかったわよ。」
またママが、自身の謎経歴の欠片を披露してくれた。

「インターハイ……それって、光くんのパパの頼之さんも出てた時?」
「そうそう。そこで、成之さんとバッタリ出くわしたのよね~。あ、奥さまの真澄さんも。」

そんな話をしてると、人混みを強引にかき分けて薫くんがやって来てくれた。

「桜子!大丈夫か!?」
薫くんは私の両腕を掴んでそう聞いた。

びっくりしたけど、心配してくれてることがうれしくて……顔がにやけちゃいそう。

「うん。鍼打ってもらったら、だいぶよくなった。薫くん……今日はごめんね。」
ボランティアに行かなかったことを謝った。

「大変だったねえ、さっちゃん。マスター。……あけまして、おめでとうございます。」
遅れてやって来た光くんがそう挨拶した。
すぐ後ろから、光くんのパパとママがやって来た。

え!?
もう、0時過ぎたの?

「おめでとう。今年もよろしく。……成之と真澄さんは?」

パパがそう聞くと、光くんのパパの頼之さんが肩をすくめた。

「会社の賀詞交換会まで須磨で過ごすそうです。」

ママは持ってきたお重箱を光くんママに手渡した。
「あおいちゃん、これ、少しだけど。」

「え!わざわざ持ってきてくださったんですか!……すみません、いつも。お気遣い、ありがとうございます。」

恐縮する光くんママから、頼之さんがお重箱を預かって大事そうに持って頭を下げた。

「ありがとうございます。いただきます。」

……ほらほらほら。
パパはママがお重箱を持ってても何も気にならないみたいだけど、小門家では必ず男性陣が荷物を持つのよね。

すごいなあ、と改めて頼之さんを見てると、私の腕を薫くんが引っ張った。

「なあ。桜子。着物着ぃひんの?」

……すっかり忘れてた。
そういえば、そうね。
お正月だから、お着物を着てもよかったのよね。

「ほんとね。明日は朝からボランティア行くし、無理して着てくればよかったかな。」
「ん~。まだしんどいやろし、無理させるんはかわいそう。……まあ、また、おばあちゃん帰って来たら、着せてもらおう。」

薫くんとそんな話をしていると、姫系って言うのかな、今時のフリルやレースを各所にのぞかせた可愛らしいショッキングピンクのお着物の女の子が人ごみから飛び出してきた。