小夜啼鳥が愛を詠う

……意外と痛くないのね。
てか、むしろ、スッキリ気持ちいい?

あんなに重だる痛かった腕が、普通に上げられるようになった。
曲がらなかった腰が、柔らかく曲げられるようになった。
特に首筋の鍼には、頭がサーッと軽くなり、視界が明るくなった気がした。

「鍼って、すごいですね。」
素直な感嘆に、若い鍼灸医はうれしそうにうなずいた。

まだあちこちが重だるいけど、痛みは楽になった。
けど、さすがにボランティアには行かせてもらえなかった。

「玲子にはちゃんと連絡入れたから、今日はおとなしくしときなさい。……初詣も延期かなぁ。」
車の中でパパが私にそう言った。

「さっきより全然楽ちんだから、初詣には行けると思うんだけど……。」

せっかくパパと2人で楽しみにしていたので、無理しても行きたい。

「まあ、とりあえずゆっくり休みなさい。初詣より、さっちゃんの身体のほうが大事だよ。」
パパはそう言って、私の頭を撫でた。

「さっちゃんは、いつも自分のことよりヒトのためばっかり頑張ってるから、たまにはこーゆーのもいいんじゃない?」

「……ヒトって……パパは私のパパだもん。」

もちろんパパが言わんとしたことはわかる。
何も、パパが私と他人だと言ってるわけじゃない。
でも何となく、そう強調したくなった。

私のパパ。
私だけのパパ。
そして、私のパパは、パパだけ。
……たとえ血はつながってなくても、それは変わらないから。

そっとパパの肩にもたれようと思った……けど、身体を捻るとまた背中が痛くなったので、慌てて戻った。

「おとなしくしとき。……でも、ありがと。」

私の気持ちは、ちゃんとパパに伝わったみたい。
心の中に幸せが広がった。


帰宅すると、ママはおせち料理作りにいそしんでいた。
パパは、遅ればせながら、今年最後の純喫茶マチネを開店させに行った。


「やー。びっくりしたよ。お客さまと、光くんが、この寒いのに一列に並んで待ってて。……光くんには店の鍵を渡しといたほうがいいかな。」
夜、帰宅したパパがママにそんなことを言っていた。

……光くん……たった1週間で、着々とパパの信頼を得て、お店に居場所を築いてる……。

「そのうち、光くんに任せられそう?」

何の気なしにママがそんなことを言った。