小夜啼鳥が愛を詠う

持ち上げる時、腰に違和感を覚えたけれど、勢いで3度搗(つ)いた。

「はい!もうええやろ!お疲れさん。」
やっとそう言ってもらって、私はお役御免になった。

杵を次の人に渡してから、気づいた。
腰も変だけど……握力が……。

「手が震えてる……。」
涙目でそう訴えたら、薫くんが、私の腕を少しマッサージしてくれた。

「今晩、湿布貼りや。明日、しんどーならんといいけど……。」
「うん。お風呂であっためる。」

薫くんの心配が心地よくて、私はいつも以上に甘えた。



残念ながら、薫くんの危惧は的中した。
誇張ではなく、翌朝、私はベッドから起き上がることができなかった。

腕が……背中が……首が……、痛くて痛くて、全然動かせない!


「さっちゃん?今日もボランティア行くんでしょ?起きないの?」

起こしに来てくれたママに、私は涙まじりに訴えた。

「動けないの……これって、ぎっくり腰かなあ?」
「え!ちょっ!章(あきら)さーんっ!さっちゃん、運んでー!」

ママは慌ててパパを呼んだ。

「さっちゃん!?どうした?」
パパはお餅をかじりながら来た。

……昨日、私が分けてもらってきたお餅だ。

「……それ……。私も、何回か搗(つ)いたの。たぶん……筋肉痛……。」

そう言ったら、ママは笑い、パパはお餅をのどに詰まらせたような顔になった。

「うーん、そっか。確かにさっちゃんにはハード過ぎたかもね。……まあ、時間薬だけど……鍼治療が早いかな。章さん、さっちゃんを車に運んでくれる?」

鍼!?
こ、こわいっ!

「……さっちゃん、怯えてるみたいだけど……」
パパが苦笑しながら、私を抱き上げてくれた。

ふわりとパパの甘い香り。
くっつかなければわからない程度に極々微量つけてる濃厚なジャスミンの香水と、たぶん加齢臭もあるんだろうけど、私には安心できる大好きな香り。

パパの胸に頬を擦り付けて、安心感で満たされた。

……遺伝子上の……実の父親の匂いは……どんな匂いなんだろう。




鍼の先生は、意外と若い男性だった。
しかもわざわざ南京町近くまで来たのに、日本人?

「……お餅つき、ですか。まあ、毎年そういうかた、いてますわ。」
そう言って、鍼灸医は何本もの鍼を私に刺していった。