「あーっはっはっは!そりゃそうよね!……や~、見たかったわ!おかしい!」
「……玲子さんてば……確信犯だったんだ……。どうするの?披露宴に成之さんも来るように、御院さん、頼んでたよ?」

玲子さんは、涙を指でおさえて言った。

「まあ、いいんじゃない?お互いの幸せを眺めたら、これまでのつらさも昇華される、って御院さんがおっしゃるの。さすがよねー。私なんか、幸せを見せつけたいのか?って、穿った見方しかできないのに。御院さんといると、どんな心持ちでいれば幸せになれるか、よーくわかるわ。……実は、誰しも、どんな状況でも幸せになれるものなのね。……知らなかったわ。」

……深い。
玲子さんの口調は軽いのに、その言葉の意味は深くて重かった。

「えーと……じゃあ、おばあちゃんにも?……真澄さんにも列席してもらうの?」

さすがにそれは悪趣味というか……。

でも玲子さんは、ニッコリ笑った。
「あちらにお任せするわ。でも、もし来ていただけるなら、私、今なら謝罪できると思う。」

謝罪……。
切ないはずなのに、玲子さんがやたら清らかで素敵に見えた。


その日は、薫くんとあまり話せなかった。

年末になり、いつものボランティアさん達がお休みされ始めたので、その分、外回りが忙しくなってしまったようだ。
これから、中の職員さん達も順番に休まれるので、私も忙しくなるだろう。

お茶を届けることも、一緒にランチをとることもできず……。

「桜子ー!!!」
たまに私を見つけると、遙か遠くからでも、ぶんぶんと手を振ってくれる薫くんに、泣きそうになった。

「張り切ってるわねえ。クソガキ。」
玲子さんがそう揶揄するほどに、薫くんは変わらず元気いっぱいで……それだけは、ちょっと安堵できた。

でも、15時を待たずに、薫くんと藤巻くんは、本日のご奉仕を終えてしまった。

「佐々木和也来てるって!ちょっと行ってくる!」
「お先でーす!」
薫くんと藤巻くんは、そう言い残して飛び出した。

……おいてけぼりだ。
しょんぼり。

薫くん、冷たい……。
私のこと、忘れてるよー。

……なんて恨み言、言えるわけないけどさ。
拗ねっ。

……不思議。
光くんには、こんな風に思ったことなかったのに……薫くんには、私、欲張り?

……ダメ。
わがままになっちゃ、ダメね。


あまりにも私のテンションが下がったからか、帰りも玲子さんが送ってくれた。
てか、そのままママと盛り上がって、結局、夜ご飯も一緒に食べた。

「それで、京都にはいつ引っ越すの?お家はもう決まってるの?」

ママ、うれしそう。