小夜啼鳥が愛を詠う

「ま、いいんじゃない?男はみんなマザコンやてゆーやん。」

朝秀先生はそう言ったけど、薫くんは該当しないかも。

ね?
……と、振り返って薫くんを見た。

薫くんは、ハッとしたように慌てて私から手を離した。

あらら。
別に離さなくていいのに。

ちょっと残念な気分。

「ほな、帰ろうかな。明日も早いし。」

坂巻さんがそう言うと、朝秀先生が引き留めた。

「え!いいやん、泊まっていけば。せっかくやし、飲まへん?」
「……これから飲んで、夜明け前に、一人で帰れってか?……酒、さめへんわ。」

そう言いつつも、坂巻さんは残った。

ほんとに仲良しなんだなぁ。

さすがに、私たちはお酒につきあえないので、しばらく同席してから、先にやすませてもらうことにした。

親友同士の会話が楽しくて、もっと聞いていたいけど……。

「あれ?でも、寝るん、2人だけ?……さすがに、まずいかな?薫くん、衝動的に桜子ちゃんを襲ったらあかんよ~。」

芋焼酎でいつもよりさらに口の軽くなったらしい朝秀先生が、そうからかった。

「もう!朝秀先生や光くんとは違うんだから!」

からかわれた薫くんより、私の方が過敏に反応してしまった。

薫くんは、照れたり怒ったりすることもなく、ニヤリと不敵に笑った。

え?
何で?

……えーと……薫くん……?
もしかして、薫くんも……発情期……?

ドキドキしてきた。

「こんな合宿みたいな状況で、桜子に恥かかせるわけないやん。あほらしい。」

薫くんは、いつものように私ヘの好意を隠すことなくそう言った。
気恥ずかしいけど、誇らしくもあった。

「はー。偉そうに。……でもいいなあ。薫くん。初恋は桜子ちゃんやろ?この面子(めんつ)で唯一まともな初恋じゃない?」

そう言って、朝秀先生はクスクスと笑った。

「春秋。酔ってる。よけいなことは、言うな。」

坂巻さんにそう言われて、朝秀先生は、わはわは笑った。

「これぐらいで、まだまだ酔ってへんて。……俺は絵ぇで、孝義は幽霊で、光くんは実の母親やろ?変なのー!」

……確かに、列挙すると変な人たちだ。

「……なるほど。絵と幽霊、か。おもろいわ。」

薫くんは呆れてそう言ったのに、朝秀先生はうれしそうな顔になった。

「そやねん。おもろいやろ?全然ちゃうようで、実は女の趣味は似てるっちゅうか……なあ?中学からずっと同じ女の子のこと好きやったし~。」
「一緒にするなや!俺は一途やけど、お前は取っ替え引っ替え、誰とでもつきあってたくせに。」

坂巻さんにそう言われて、朝秀先生は大げさに首を傾げて、そのままゴロンと横に倒れて寝そべった。

「だって、俺、女の子好きやもーん。それに、好きな女の子には嫌われたくないから、臆病になるってゆーか……安易に手出しできひんもーん。俺かて、めっちゃ一途やわ。」

最後は拗ねたような口調になった朝秀先生は、めちゃめちゃかわいかった。