「……ありがと。」
なんとなく、小声で薫くんにお礼を言った。
薫くんは、自分の腕にしがみついてる私の腕を、ポンポンと軽く叩いた。
「桜子も、光も、嫌なモンは嫌って、自分で言えへんもんなあ。……俺、マジで心配やわ。最近は光、変やし。」
ぎくりとした。
光くんの発情期、もとい、光くんに本当のお父さんの彩瀬さんが降臨するんじゃないかって話……薫くん、知ってるのかしら。
「光くん、そんなに変なの?」
そう聞いてみた。
「うん。取り憑かれとる。特に真夜中?徘徊しよるねん。」
徘徊!
「お家の中を?」
……さすがに「パパとママの寝室へ?」とは、聞けなかった。
薫くんは、さらりと言った。
「ああ。光のほんまの父親の彩瀬おじさんやて。あーちゃんあーちゃんて、泣いとーわ。かわいそうやけど、どうしようもならんしなあ。」
……えーとー……。
薫くん、知ってたんだ。
そっか。
「……そう。成仏してくださるのかな。光くんの遺伝子上のパパ。」
私のつぶやきに、薫くんは言った。
「わからん。でも、かまへん。お父さんもお母さんも、彩瀬おじさんのこと、好きやし、会話が成立するとすごくうれしいみたいや。せやから、彩瀬おじさん付きの光でも、かまへんねん。俺らがフォローしたればいいねん。」
……うう。
薫くんが、マジでかっこいい。
たぶんお父さんの頼之さんの受け売りだろうけど、薫くんの本気はよく知ってるから。
頼もしいわ。
「ほな、行こうか。俺も見たい。絵ぇ。」
「うん!」
なんとなく、薫くんにエスコートされて歩くことが心地よくて……足取りがふわふわする。
どこまでもこうして歩いていたいような、不思議な気分。
あ。
また、薫くんの、身長伸びた?
男の子って、すごいな。
「……やわらかい。」
ボソッと薫くんがつぶやいた。
私?
キョトンとしてると、薫くんは顔を背けて、ぶっきらぼうに言った。
「当たってる。……他の奴には、するなよ。」
え?
なに?
他の奴に……することはないと思うけど……え?
「薫くん?」
薫くんの顔を覗き込もうとして、私はやっと気づいた。
私の、なけなしの胸が薫くんの腕にくっついてることに。
「わ!ごめん!」
慌てて手を離そうとしたけど、薫くんは、むしろぐいと私を引き寄せた。
頬が紅潮してる。
でも、薫くんの目は全然、いやらしくも、ふざけてもいなかった。
ただ、私が離れないように、引き留めていた。
……かなわないな。
私は、開き直って、再び薫くんの腕に手を絡めた。
「……薫くんのH。」
口をとがらせてそう言ったら、薫くんが肩をすくめた。
「アホか。俺も男や。好きな女には、当たり前に反応するわ。」
好きな女、だって。
……なんか、かっこいいな。
小学生のくせに……くせに……もう。
参った。
薫くんが、どんどん成長してく。
素敵になってく……。
どうしよう。
なんとなく、小声で薫くんにお礼を言った。
薫くんは、自分の腕にしがみついてる私の腕を、ポンポンと軽く叩いた。
「桜子も、光も、嫌なモンは嫌って、自分で言えへんもんなあ。……俺、マジで心配やわ。最近は光、変やし。」
ぎくりとした。
光くんの発情期、もとい、光くんに本当のお父さんの彩瀬さんが降臨するんじゃないかって話……薫くん、知ってるのかしら。
「光くん、そんなに変なの?」
そう聞いてみた。
「うん。取り憑かれとる。特に真夜中?徘徊しよるねん。」
徘徊!
「お家の中を?」
……さすがに「パパとママの寝室へ?」とは、聞けなかった。
薫くんは、さらりと言った。
「ああ。光のほんまの父親の彩瀬おじさんやて。あーちゃんあーちゃんて、泣いとーわ。かわいそうやけど、どうしようもならんしなあ。」
……えーとー……。
薫くん、知ってたんだ。
そっか。
「……そう。成仏してくださるのかな。光くんの遺伝子上のパパ。」
私のつぶやきに、薫くんは言った。
「わからん。でも、かまへん。お父さんもお母さんも、彩瀬おじさんのこと、好きやし、会話が成立するとすごくうれしいみたいや。せやから、彩瀬おじさん付きの光でも、かまへんねん。俺らがフォローしたればいいねん。」
……うう。
薫くんが、マジでかっこいい。
たぶんお父さんの頼之さんの受け売りだろうけど、薫くんの本気はよく知ってるから。
頼もしいわ。
「ほな、行こうか。俺も見たい。絵ぇ。」
「うん!」
なんとなく、薫くんにエスコートされて歩くことが心地よくて……足取りがふわふわする。
どこまでもこうして歩いていたいような、不思議な気分。
あ。
また、薫くんの、身長伸びた?
男の子って、すごいな。
「……やわらかい。」
ボソッと薫くんがつぶやいた。
私?
キョトンとしてると、薫くんは顔を背けて、ぶっきらぼうに言った。
「当たってる。……他の奴には、するなよ。」
え?
なに?
他の奴に……することはないと思うけど……え?
「薫くん?」
薫くんの顔を覗き込もうとして、私はやっと気づいた。
私の、なけなしの胸が薫くんの腕にくっついてることに。
「わ!ごめん!」
慌てて手を離そうとしたけど、薫くんは、むしろぐいと私を引き寄せた。
頬が紅潮してる。
でも、薫くんの目は全然、いやらしくも、ふざけてもいなかった。
ただ、私が離れないように、引き留めていた。
……かなわないな。
私は、開き直って、再び薫くんの腕に手を絡めた。
「……薫くんのH。」
口をとがらせてそう言ったら、薫くんが肩をすくめた。
「アホか。俺も男や。好きな女には、当たり前に反応するわ。」
好きな女、だって。
……なんか、かっこいいな。
小学生のくせに……くせに……もう。
参った。
薫くんが、どんどん成長してく。
素敵になってく……。
どうしよう。