「……そうか……。」

光くんパパは少し思案して、それから、笑顔を見せてくれた。

「もやもやすることがあれば、光と話してみ。」

「え!光くん……いいんですか?」

光くんも、知ってるの?
自分のパパが本当のパパじゃないってこと。

いつから?

ドキドキしてる私に、光くんパパが言った。

「さっちゃんは、昔から光に違和感を指摘することもなく、接してくれとったなあ。」

「違和感……ですか?……どうだろう。光くん、いろんな顔を持ってるから……新しい一面を見せてくれる度に、新鮮ですけど。」

そう答えると、光くんパパはうなずいた。

「ありがとう。さっちゃんのような理解者がいてくれて、助かるわ。……転校先には、さっちゃんも薫もいないから……光は、自閉症と多重人格扱いされとーる。特別学級を勧められたわ。」

え!
特別学級って……。
だって、勉強についていけないわけじゃないのに、そんな……。

「……光くんは、感受性が豊かなだけなのに。」

涙がこみ上げてきた。

確かに、光くんは普通じゃないのかもしれない。
でも、決して劣ってるんじゃない。

むしろ優秀すぎて、優しすぎて……花鳥風月に共感して涙を流したり、霊的なモノに取り憑かれやすいだけ。


「上手いこというなあ。なるほど。今度からソレ使おう。」

光くんパパは妙に納得してそう言った。
そして、私に尋ねた。

「光に降りてくる仙人みたいなアレ……わかる?」

「仙人……あー、そういう時もありますね。光くんのママにベッタリなのも、マザコンじゃなくて、飼い犬か猫が憑依してるのかしら。」

そうつぶやいたら、光くんパパはぷっと笑った。

「いやいや。たぶん1人だけや。他の人間も犬も猫もないわ。あれは、あおいにだけ執着の強い仙人……光の実の父親や。たまに記憶ごと光に入り込むみたいや。」

冗談のような話だ。
なにも知らないヒトが聞けば、精神を疑われるかもしれない。

でも、私は妙に納得した。

亡くなった、光くんの本当のお父さんか……。

そうだったんだ。
光くんの危うさの根本は、そこにあったのか。

そんなの、普通は信じられないし、理解を得られないよね。

かわいそう……光くん。

「心配ですね。学校で、光くん、独りぼっちじゃないといいけど。……越境でうちの小学校に通うわけにはいかないんですか?」

まあ、私と同じクラスになれるとも限らないけど。