小夜啼鳥が愛を詠う

パパはお店を閉めようか、と気を使っていたけれど、
「別に罪を犯したわけでも、隠したいわけでもないから、このままでいいわ。ありがとう、マスター。」
と、頼之さんは手を挙げて断った。

……夕べの薫くんに似てる……。

逆か。
薫くんが、お父さんの頼之さんに似てるんだもんね。

改めて、頼之さんを見る。

……カッコイイ……のは置いといて、……うん、薫くん、頼之さんに似てるね。

何となく頬がにやけてきたけど、そんな雰囲気じゃないので、意識して口元を引き締めた。


「さっちゃん。夕べは、家内と光が迷惑かけて、ごめん。」
頼之さんはそう言って、頭を下げた。

私は慌てた。

「あの、頭を上げてください。……それに、私も悪いんです。熱があるのに。……それで、薫くんに助けてもらっちゃいました。ありがとうございました。」

「……そーだそーだ。迷惑かけられたんじゃなくて、さっちゃんがしゃしゃり出たんだよ、頼之くん。逆にこの子を叱ってくれないと。……薫くんに背負われてたさっちゃん、ぱっと見ぃ、酒で酔いつぶれたようにしか見えなかったぞ。みっともない。以後、気をつけるように。」
そんな風に言いながら、パパがコーヒーを出してくれた。

イイ香り。
ホッとする。

「ごめんなさぁい。いただきます。」
パパにそう言ってから、カップに口を付けた。

お気に入りのコウルドンの華麗なコーヒーカップに、大好きなパパの入れてくれたとっておきのコーヒー。
幸せで、どうしても笑顔になってしまう。

頼之さんは、そんな私を目を細めて見てくれていた。
「あおいから聞いた。さっちゃんが、誰から何を聞いて、どこまで知っとるんかわからんから、俺は、俺とあおいの把握しとることだけを全部開示する。あとは、さっちゃんが考えてくれたらいいから。」

隣で、光くんママが黙ってうなずいた。
全てを頼之さんに任せるつもりらしい。

光くんママの性格なら、むしろ自分が話したいだろうに……。
それだけ、頼之さんを信頼してるのかな。

うらやましく感じつつ、頼之さんを見つめた。
頼之さんは、いつもより低い声で話してくれた。

「さっちゃん、昔、光のことを感受性が強いだけ、と言ってくれたの、覚えとーか?」

言った!
確かにそう言った!

私はうなずくのを見て、頼之さんもうなずいた。

「あの頃までは、ほんまに、ちょくちょく感じとったんや。光の実の父親の気配を。でも、ここ数年は、なりを潜めてた。せやし安心しとったんやけど……この春ぐらいからかな?」

光くんママが真面目な顔でうなずいた。