「次からは授業中に使うなんてことしないでくださいね」



「はーい」


「わかりました。」





1日の授業も終わり没収された携帯を2人揃って取りに職員室へ



反省を感じない返事をしたためその後数十分残されることになった杏璃に笑顔で手を振り、忠犬のように待っているであろう零の元へと向かう





あ、いた。




今はもう散ってしまった桜の木の下、少し長い前髪を風に揺らされながら待っている零





「零!おまた…せ……」






私の声に反応してゆっくりと上がる口角



また、ゆっくりと繰り返される瞬きや大きくなっていく瞳




こちらを振り向くまでの動作全ての速さが遅く見えるのに対して心臓は痛いほどに早く脈打つ






「ううん、全然待ってないよ!俺も今来たところだし」



「…あぁ、うん。どこのスーパーいく?家の近くにする?」



「わかった、そうしよう」





スルリと繋がれた手は朝とは違い恋人つなぎに変わっている




人気の少ない放課後の通学路を2人並んで歩く



そういえば零が家に引っ越してきたときもこうやって手を繋いで街を案内したっけな。




今日の出来事を楽しそうに喋っている零の横顔をちらりと見る



そんな私の視線に気づいたのか前を向いていた目はこちらを向きニッコリと笑顔をかえされた




昔は目が合うことさえ恥ずかしがってたっけ。




「どうかした?」


「いや。零も成長したなーって思って」


「へー、男らしくなったって感じた?」


「ふふ、ありえないから」



期待を顔中に貼り付けて私に問いかけるその姿があまりにもおかしくて笑ってしまう



何度も何度もそんなことは無いって言っているのに何故わからないのだろうか



再びクラスの話をしだした零に適当に相槌を打って着実に店へと向かっていく