「あーあ、誰かさんのせいで携帯没収されたから暇だなー!」




授業が終わるやすぐに私の隣までやってきて杏璃はずっと同じことを繰り返す



爪を眺めながら悪態をつくその横顔に許してくれる気配はなし





はぁっとため息をついた時騒がしい教室に扉を開く音が微かに響いた




「お、愛しの義弟くんだよ〜ラブラブしといで!」


「やめて!変な噂が流れる!」




私の席にすぐに気づいた零は笑顔でタタタッと走り寄ってきた



他学年が教室に来たというだけで目立っているんだからそんな笑顔で寄ってこないでくれ




周りからの視線が矢のように突き刺さり注目の的になっているのがよくわかる





「姉さん!返事返ってこなかったから心配したよ」



「携帯取られちゃってさ、なんだっけ?放課後の話だよね?」




すっかり機嫌のなおった杏璃は一言一句聞き漏らすまいと会話に耳を傾ける


その顔は筋肉がなくなったのではないかと疑うほどにやけきっていて怖い




絶対こうなると思ったから私が訪ねに行こうとしていたのになぜ目の前の弟は待てないのか?!





「うん、オムライス作ってくれる?」


「いいよ。じゃあ、放課後校門前で待ってて。ちゃんと、待っててね?」




釘をさすように2度言うとこくこくと頷く


そのようすはまるで待てと言われた犬のようで尻尾を左右に降る幻覚が見えた




「次の授業も始まるし早く教室戻ったら?」


「え、あ。走ったらすぐ着くしもう少し姉さんと話したいから一緒にいてていい?」




いやいやいや!やめて!!


私のクラスでそんな事言わないで!


血が繋がってないって知らない人だっているんだよ?!




弟の発言は傍から見たらシスコンそのもの。


そして、その発言に誰よりも心踊らせているのはやはり杏璃



力強く背中を叩かれ鈍い痛みが広がる



頼むから興奮しないで杏璃さん