「今日も仲良く義弟くんと登校ですか」


「はぁ、やめてよ。」




HRも終わり騒ぎ声が響く教室で上村 杏璃【うえむら あんり】が私の机までからかいに来た


ふわふわとしたポニーテールを左右に揺らしながらにやにやとした笑顔を浮かべるその姿に苛立つ




「いやぁ。もういっそのこと義弟くんと付き合っちゃえば?血の繋がりないんでしょ?なら、大丈夫だって!」


「世間体ってのがあるでしょ!」


「あー………何とかなるよ!!」


「ならないよっ!!」





弟に告白されるという突拍子のない事態に混乱するのは人間として普通の事だと思う


ならば、友達数名に相談することだって普通でしょ?



姉弟間の恋愛について次から次へと説明する彼女の瞳はキラキラと輝いている



そんなに言うなら杏璃も大学生のお兄さんと付き合えよなんて思うが、今ここで反論しては話が長くなるだけだなと予想し私は黙って頷く




「なぁに?また弟くんの話?」


「っ。邪魔、重い、どいて。」




もう1限目のチャイムが鳴ろうかと言うところにやってきたのは他クラスの成瀬 翔夜【なるせ しょうや】



どこかの誰かを思い出させる大きな腕が私の頭に体重をのせてきて痛い。





「そう言う翔夜くんは何しにきたのですか?」


「いやぁ、国語の教科書忘れたから借りに来た。優葉に!」


「貸したげるからどいて!重いって!」



ばんばんっと力強く腕を叩くと渋々といった態度で私の頭から離れる

それと同時に授業の始まりを告げる音が響き渡った




「げっ。早く貸せよ!次尾上なんだって!!」


「あぁ、あの人教室来るの早いよね?しかも遅刻にうるさいじゃん」


「わかってんなら早く渡せよ!」




開放感に心を安らがせてる暇もなく焦らされるまま教科書を差し出す


さんきゅう!とひらひらとこちらに目を向けず大きな音を立て走り去った




「ねぇ、さっきのって英語の教科書じゃない?」

「え?あ、ほんとだ。」