"行ってきます"


"行ってらっしゃい"




ふたり揃えて声をかけ見慣れた玄関を通り過ぎて片道約15分の学校へ向かう



弟が入学して今日で約1ヶ月。


仲のいい友達もでき充実した1ヶ月を過ごしているらしいがその友達とやらを私は見たことない




「それでね、亮平がーーーーーーー」


「へー、そうなんだ」




意気揚々と亮平くんの話をする零に適当に相槌を打ち友達からのメッセージに目を通す




(茜:ねぇ、優葉!今から学校サボって合コンいかない?今回はイケメン揃いだよー)




午前8時3分。



ディスプレイに写った時刻を目にし小さくため息が出る




こんな朝っぱらから合コンなんて何を考えてんだか。


学生の仕事は勉強なんだからせめて放課後にしなよ



優等生とは言い難い私の友達に断りの返事をいれるため画面に指をすべらせる



もちろん、(今度は放課後にセッティングしてよ!笑)と一言添えるのを忘れずに。






「聞いてる?」


「んー?聞いてるよ、亮平くんでしょ?」


「はぁ?全然話聞いてないじゃん。俺が話してるんだから携帯いじってないで聞いてよ。」




どうやら既に亮平くんの話は終わっていたらしくムッとした顔でこちらを睨みにきた


いい歳して大通りで喧嘩なんて出来たものではない




………こうなったら仕方ない。




「ん。手繋いであげるから機嫌なおして?」


持っていた携帯を鞄へ戻し空いた手を伸ばしてあげる



ぱぁっと笑顔が広がり私の手をぎゅっと握ってくるその姿は少し昔の零に似ている



こんな事で機嫌がなおるなんて単純な弟だ