前から受ける春の風は、大好きなはずなのに、どこか寂しくて。



道路に散らばっている花びらに目を向ける余裕もなくて。






「………ぅっ」



涙を止めることさえ、できなかった。










なんでこんなにも悲しいんだろう。


なんで涙が出るほど辛いの?


今までも窓から見てきたじゃん。



ケンカなんて、帝翔くんにしてみれば遊びみたいなものじゃん。



別に今更変なことでもない。







……なのに。




駅のホームで、あたしの足はやっと止まる。


だけど涙は一向に止まってくれなくて。





「………やだ」



目の前で、間近で、あんな帝翔くんを見たくなかった。