頬についた赤い傷も


さっきまで相手を殴っていたであろう拳も





「……千咲」



ボソッと呟き、小さく動く唇も






「帝翔、くん……」






全て、見たくなかった。






その隙をみて、乱闘を繰り広げていた二人の男は足を引きずりながらその場を去っていった。



帝翔くんはそれを追うこともなく、ただあたしを目を丸くして見つめて動こうとしない。



その場だけ時間が止まったような感覚で、あたしも視線を外すことができなかった。