頭の中に微かに霧がかかったままのあたしを放って、そのままドアのほうへと向かう。




「えっ依智佳、どこ行くの?」



涙はとっくの昔に引いており、あたしも急いで立ち上がって依智佳を追う。





「どこって、教室。一応授業中だし戻んなきゃね。
………行こ、千咲」




優しく笑って、依智佳は手を差し伸べた。


その笑顔を見ると、どこか安心できる。




あたしはその手をキュッと握り、二人揃って階段を下りた。











……あたしは帝翔くんが好きなの?



好きなんて感情、あたしはまだ知らない。


だからか、まったく答えが出ない。