「じゃあ……千咲は、黒崎帝翔のこと……嫌い?」



「嫌い?」そう聞く依智佳の声はどこか柔らかくて優しかった。





嫌い、じゃないよ。


……たぶん。




だってその言葉がしっくりこないんだもん。


全然リンクしない。




嫌いなんかじゃ、ない。






あたしはフルフルと頭を横に振った。






依智佳はそれから「そっか……」と言うだけで、黙り込んでしまった。


それから依智佳は空へと視線を向ける。



あたしも依智佳につられ、雲の流れをボヤーっと見つめた。





あたしもなんとなく声を出すのを躊躇ったため、しばらく沈黙が続いた。