「・・・いっ、坂井っ!」


「は、はいっ!」



クラスで笑いが起こる。


その子は緊張している様子で自己紹介をした。


「さ、坂井梨緒です、1年間よろしくお願いしますっ!」


“坂井梨緒” 俺は隣の席に座る女の子を見た瞬間目が離せなくなった。


多分染めていないであろう柔らかいイメージをもつ栗色の、肩の上で綺麗にまとまった髪。


白い肌、大きな瞳、緊張からか少し赤く染まった頬。


彼女の1つ1つに目を奪われて思わず見惚れてしまいそうになった。


その時ちょうど自己紹介が俺の番になって少しホッとする。


あのままだったらずっと見ていたに違いない。


そんな心の中の葛藤を誰にも気付かれないように平静を装って自己紹介する。


「中野陽斗、1年間よろしく。」