さまよう渡くん






「な、なんのはな」




プツンッ!



「ッ!?」




突然真っ暗になる図書室。




嘘でしょ…。




うずくまる私は、自分の肩を抱き唇を噛み締める。




本当に…



ごめんなさい…



ごめんなさい…



ごめんなさい…



ごめんなさ…




フワッ……




「え……………?」




ふと感じたあたたかなぬくもりと優しい香り。




「大丈夫だから。」





すぐそばで聞こえたのは低く優しい声。




わた…し…




抱きしめ…られてる………?





「……………。」




え、えぇ?!!!!



私幽霊に抱きしめられてるよ?!



ど、ど、ど、どうしよう…。



突き放す?


いやいや、追い掛けてきて殺される…。


じゃあこのまま?



この人の腕の中で…




「大丈夫だから。そんな震えんな。ゆっくり深呼吸しろ。俺がいるから。」




「…っ………!」



ドキンッ……!



あ、あれ……?



なんだろう…。



恐怖心はなくて…


けど……





胸がドキドキしてきた……。


すごい速さで心臓が鳴ってる…。




死ぬの…かな…?


ああ…



この人の腕の中で死ねるなら……。



あ……



もしかしてこの気持ちは恋…?



このドキドキは恋なのね…。



きっとそう。



きっとそうだ…。





お母さん。お父さん。


そして千鶴。


私は幽霊に恋しました…。



一生ついて行くことを決めました…。



ああ…



なんて幸せなのだろうか………。









そのあたたかいぬくもりに包まれながら、


私はそこで意識を手放していた…。