さまよう渡くん






「い、やぁーーー!!!!






その叫びを最後に、Aさんはその日から行方不明になったという……。」




「わ、わぉ……。」



恐ろしい……。



「なに手震えてんのよ。安心なさい。そのAさんは見つかって、今は幸せに暮らしてるから。」



「ほ、本当にあった話しなの…?」



「そうよ。けどね…そのAさん…。
見つかった時からずっと…渡くん…渡くん…ってつぶやいてるんだって…。」




「お、お、お、おかしくなっちゃったの…?」



「そうよ?この学校に伝わる七不思議の1つでもあるのよ。“さまよう渡くん”ってね…。」



「さ、さまよう渡くん…。」



「ふっ。あんたも気をつけなさいよ?今日本の返却日あーんど図書当番でしょ?」



ニヤリと笑った千鶴の顔は、恐ろしいほど怖かった。



私は身震いをして千鶴をにらむ。



私は本がまぁ好きで、よく図書室に通っている。


そう。

今日は借りていた本の返却日。



こんな話しを聞かされれば、誰だって1人で図書室なんか行きたくなくなる。


そして水曜日の今日、私は図書当番。
いつもそれに合わせて私は本を借りていたのだ。



あの時の私は未熟だった。


うん…。とても未熟だった…。



こんな話しを聞かされるなら、自分の当番の時に本を借りることを日課にしなければ良かった…。






と、言うことで……