その日は、今日みたいなどんよりとした空だった。
高校1年生のAさんは、本が大好きで、放課後はよく図書室に通っている。
HRを終えたAさんは、その日もいつも通り図書室へと向かった。
ガラッと図書室を開ければ、やはり誰もいない。
放課後は部活の人もいれば、すぐに帰ってしまう人もいる。
けれど図書室へと足を運ぶ人はいなく、たまに仲の良い友人を誘って勉強したりするが、たいていAさんはいつも1人だった。
そんな日常にも慣れて、いつものようにAさんは本を広げた。
その時だった。
ザーッ!!!
『っ!!?』
突然耳に突き刺さる雨の音。
『やだ…。すごい雨降ってきた。しばらく帰れそうにないな。』
そうつぶやいて、Aさんは本を読み始めた。
何分経っただろうか?
雨音がだんだんと弱まってきた頃に、突然部屋の中が真っ暗になった。
『なに?!停電?!』
目の前が闇に包まれ、Aさんは恐怖を感じてうずくまる。
この図書室には誰もいなく、Aさんは暗闇が苦手だ。
そのせいでどんどんと恐怖心が高まっていく。
やだ…
怖い…
誰か助けて…!
心の中で何度も叫びながら、Aさんはギュッと目をつぶって自分の肩を抱いた。
ドクン…ドクン…
そんな自分の心音にも恐怖を感じ始めた頃。
ふと灯りが付いたのだ。
Aさんは一瞬辺りを見渡し、すぐに立ち上がる。
『ふぅ…よかっ…』
た…。安堵したようにそう言おうとしたAさんは、目を見開いたまま硬直していた。
それもそうだ。
だって目の前には、
死んだはずのクラスメートが立っていたのだから。
『渡…くん…?』
Aさんは確かめるかのようにそう呼んだ。
すると目の前の男はニコッと笑って、ゆっくりと頷いたのだ。
嘘…でしょう…?
だって彼は死んだ。
彼は1ヶ月前に自ら死を望んだのだから。
この世にいるはずがないんだ…。
だからこの人は別人。
そう言い聞かせても、その考えはすぐに打ち消される。
目の前の男はやっぱり死んだはずの渡くんで、彼は右耳にピアスをし、少し染めた茶色の髪色とは正反対で、制服はきちんと着こなしている。
そのやけに根は真面目な男子生徒は、1ヶ月前に自殺した渡くんだけなのだ。
なんで…?
私は夢を見ているの?
自問自答をし続けるAさんに、目の前の渡くんはゆっくりと口を開いた。

