「………ん…。」
ぼやける視界の中で、1番最初に目に入ったのは見慣れない天井だった。
あれ…
ここは……
「大丈夫か?」
「っ?!」
バッと起き上がろうとした私だけれど、目の前に来たのは“渡くん”?のドアップ。
ゆ、夢じゃない?!!
私もしかして死んで…
「ごめん森宮。」
「へ……?」
私の名前…
知って…
「怖い思い…したか…?」
申し訳なさそうにまゆをひそめる“渡くん”?
あまりの顔の近さに私はいったん起き上がる。
「あれ…。図書室だったのか…。」
辺りを見渡せば図書室で、見慣れない天井だったわけは私が普段天井を見ていないから。
なんだ…
死の世界にでも連れて行かれ……
ん?
私は自分の今の状況に首をかしげる。
な、な、なんで私…この人の足と足の間に居座っているの?
し、失礼過ぎる!
バッと離れ、距離をとって向かい合う。
「あ…。悪い…。」
その私の行動に、“渡くん”?は少し暗い顔をした。
も、もしかして、傷付けてしまった…?
ど、どうしよう…。
でも幽霊って傷つくのかな…?
「あのさ…、松野から聞いたろ?」
急にまた口を開いた彼に、私の体は強張る。
「俺、渡千尋って言います。」
わ、わ、わ、渡だぁー!!??!
「や、やっぱり幽霊…」
「ちげーよ!俺は生きてる!」
「…へ……?」
「だから、松野から聞いたんだろ?怪談話。あれ作り話だから。」
松野って……
「千鶴?」
「そうだよ…。てか本気で信じてると思わなかった…。」
はぁ…と深いため息をつく渡くん。
い、生きてるんだ…。
本当に…?
「あ、本当だ。そういえばあったかいや…。」
自然と体が動いていて、私は渡くんの手を握っていた。
「な、なっ?!」
「はぁ…。良かった…。本当に…良かった…。」
本気で死ぬ覚悟までしたけど…。
「……で。なんでまた作り話なんか…。」
こんな停電する演出まで…
も、もしや?!
「あんの悪女め…どっかで見て笑ってんじゃ…」
「ストップ。頼んだの俺。」
「え?」
渡くんが…?
「俺、1組なんだ。森宮は5組だろ?」
よくご存知で…。
「こんな組が離れてて、俺のことなんか知らなかっただろ?」
「え…うん…まぁ…。」
接点ないし。
「それで…松野の彼氏の浦安と…俺仲良くて…それで浦安に頼んで、松野に相談したんだ…。」
相談?
「顔も名前も覚えられてないのに、どうやったら好きな子と付き合えるかって…。」
「え……?」
頬を赤く染めた渡くんにつられて、私の頬も熱くなり始める。
「一目惚れっつうか…まぁ、一目惚れだったんだ…。
俺、森宮のこと……
入学式の時から…好きなんだ……!」

