それから東山さんは、色々なことを話してくれた。


「私、出来れば来年には事務課に配属になりたいんです!受付の仕事も楽しいですけど、せっかく簿記検定とかパソコン検定もとったし、生かせる仕事がしたくて」

「仲のいい同期がいないんですよね。だから会社帰りにこうやって飲んで帰ることも少なくて……。誰かと食べるご飯って美味しいですね」

「趣味はジェルネイルです。あっ、こういう爪のことを言うんですよ。ネイルアート……は間違ってないですけど、ジェルネイルです、神田さん」

「休みの日ですか?動物が好きなので、1人で八木山動物園によく行きます。年間パスポートも安くていいですよね〜」

「映画は〜、少女漫画が原作のイケメン俳優が出てるのとかよく観ます!キュンキュンしちゃいますよね!壁ドンとか憧れちゃう」


絵に描いたような、女の子らしい女の子だ。
分かってはいたけど、さらによく分かった。
少しでも今までよりももっと彼女のことを知れたことで、気持ちはどんどん高まる。


俺も自分のことを知ってほしくて、彼女に話してみた。


「事務課は忙しいけどやりがいはあるよ。東山さんが来たらみんなに可愛がってもらえるよ、きっと。俺としては男が少なくて肩身が狭いんだよね。……あー、男同士なら須和さんもいるけど、プライベートな会話はしたことないなぁ。なにしろあまりしゃべってくれないから」

「でも受付に東山さんがいなくなっちゃったら、窓口に来るお客さんで悲しむ人が後を絶たないだろうね」

「趣味は〜、サッカーとフットサルかな。フットサルの社会人サークルに入ってて、休みの日は練習してるか、飲みに行ってるかのどっちかかな」

「映画は見ないけど、漫画なら読むよ。一番好きなのはジョジョシリーズで、特に第三部が……。え?ジョジョ知らない?本当に?貸すから読んでみてよ!面白いから!」


楽しい。
楽しすぎて、時間を忘れる。
というか、時間よ止まれ。


本気で思った。